オンデマンド配信
- 25. LGBT への理解を促進する医療人育成のための教育の検討
鶴若麻理(聖路加国際大学生命倫理学・看護倫理学領域) - 26. 病院看護師の倫理研修に関する意識
中尾久子(九州大学医学部保健学科看護学専攻)
青本さとみ(九州大学医学部保健学科看護学専攻)
酒井久美子(九州大学医学部保健学科看護学専攻)
潮みゆき(福岡女学院看護大学看護学部)
金岡麻希(宮崎大学医学部看護学科)
木下由美子(宮崎大学医学部看護学科) - 27. 道徳教育は、Physician-Researcher の専門職化にどれほど寄与するか
柳橋晃(国立がん研究センター)
松井健志(国立がん研究センター)
演者報告
LGBT への理解を促進する医療人育成のための教育の検討
鶴若麻理(聖路加国際大学生命倫理学・看護倫理学領域)
LGBTをはじめとする性的マイノリティにみられる性の多様性、また共生については、現代日本のみならず世界でも大きな社会的課題となっている。医療においても課題があることは指摘されてきた。
そこで、本研究は、医学部や看護学部の生命倫理系科目(生命倫理・医療倫理・看護倫理など)において、LGBTに関してどのような内容が取り上げられているのかを科目担当者への調査から明らかにし、その教育について示唆を得るものである。
医学部81校、看護系大学283校(2019年8月時点)の364校すべてを対象に、生命倫理系科目の担当者に無記名の自記式調査を実施した。科目内でLGBTに関する内容を取り上げているかどうか、取り上げる理由、具体的な内容や方法、教育上の配慮、課題となる点等をたずねた。本研究は、聖路加国際大学研究倫理審査委員会の承認を受けて実施した。(No.19-A048)
調査票の回収率は、医学部、看護学部全体で27.2%であった。LGBTに関する内容を授業に「取り入れている」(33.3%)、「取り入れてみたい」(21.2%)、「取り入れていない」(45.4%)であった。取り入れている理由は、「生き方や尊厳にかかわる」「適切な知識や理解が必要」、教育内容は「言葉の定義」「性の多様性」「差別や偏見」が多かった。教育上の課題としては、当事者への教育的配慮、時間数の確保、他科目との調整、教員能力等が挙げられた。
性に多様性があることは人間の豊かさであり、医学・看護学の専門家となる人々は、専門職として、疾病の診断やアセスメントを学ぶだけではなく、人間の尊厳と多様性を洞察する目を養う必要がある。LGBTに関する知識の教授、具体的な臨床で直面する問題へのアプローチ法は重要であるのは言うまでもない。学生自身が先入観に気づき、それを問い直したり、異なる意見を学び、社会の権力構造や制度の不平等、イデオロギーについて再検討できるような取り組みをふまえた教育が、生命倫理系科目であるからこそできるのではないかと示されていた。
病院看護師の倫理研修に関する意識
中尾久子・青本さとみ・酒井久美子(九州大学医学部保健学科看護学専攻)・潮みゆき(福岡女学院看護大学看護学部)・金岡麻希・木下由美子(宮崎大学医学部看護学科)
病院看護師の倫理研修に関する意識の調査を通して現状と課題を明らかにする。A県内の5病院に勤務する看護師に無記名の自記式質問紙調査を行った。質問項目は、基本属性、看護倫理の受講経験、倫理研修の必要性、受講希望、研修への希望である。得られたデータの記述統計と多重比較を行った。九州大学医系地区部局臨床研究審査委員会の承認を得て実施した。看護師1241名に配布して1057名から回答が得られ、有効回答は1047部だった。対象者は女性93.6%、25~29歳が28.2%、スタッフが85.7%で、看護倫理の受講経験がある者は、学生時代66.2%、就職後74.8%であった。倫理研修が「必要」と回答した者は93.5%だったが、「受講希望」は77.3%だった。希望する研修方法は講義49.0%、内容は事例検討とコミュニケーションスキルが多く、研修講師は外部講師が多かった。受講経験がある者は研修の必要性や受講希望を強く感じていた。また、年代が高い、職位が高い者が研修の必要性の意識および受講希望が高い傾向が見られた。自由記載では、倫理研修が大切と感じる背景に対応が難しい患者・家族への対応に関する学習ニーズ、業務多忙で参加困難な現状があり、課題解決に向けた内容の充実や参加方法に対する工夫の必要性が示唆された。