2020年12月5日(土) 15:20~16:50
ミーティングルームB(ZOOMライブ配信)

オーガナイザー
入澤仁美(兵庫医科大学,順天堂大学)

  • 「出自を知る権利」をめぐるELSI(倫理的・法的・社会的課題)―DC を利用した当事者、出生児、医療者が望む情報の観点からの検討 ―
      入澤仁美(兵庫医科大学,順天堂大学)
  • 性の多様な家族における共助の老成学的考察
      稲垣惠一(日本赤十字豊田看護大学)
  • ファンタスマゴリーとしての生殖補助医療 ―「倒錯」概念から血縁主義に基づく搾取について考える
      水野礼(名古屋大学,名古屋市立大学)
  • ドナーとレシピエントを支援する上での気づき ― NPO 法人OD-NET の活動を通じて ―
      岸本佐智子(NPO 法人・卵子提供登録支援団体「OD-NET」)
  • 代替的ART 利用をどう考えるか ~ 親も一対(ワン・ペア)である必要はない
      村岡潔(岡山商科大学)

オーガナイザー報告

本シンポジウム「生殖補助医療を利用した多様な家族形成においての倫理的課題の検討 -医療者、レシピエント、ドナーの声を通じて-」では、5人のパネリストが以下のような話題提供を行った後に、フロアディスカッションの時間を設け、充実したセッションとなった。 村岡潔(岡山商科大学)「代替的ART利用をどう考えるか~親も一対(ワン・ペア) である必要はない」:ARTは、従来、健康な異性愛的ワンペアの血筋主義的利用がデフォルトだが、今後、それを超えて単身者やLGBT等の複数者や「病者/障害者」の半血筋主義的利用もオプションとなろう。この際、いかなる子どもの誕生も世界の喜びであり、その子と複数の人間が当事者として信頼される関係を構築しケアにあたることが生命倫理的にも好ましい。子どもは未来を担う社会の宝であり親の所有物ではない。

岸本佐智子(NPO法人 卵子提供登録支援団体)『ドナーとレシピエントを支援する上での気づき~NPO法人OD-NETの活動を通じて~』
卵子提供を望むレシピエントは提供により生まれた子に「ドナー情報など知りたいことはすべて伝えてあげたい」という方が増えている。レシピエント・生まれてくる子ども・ドナーすべての生命が安心できるように「子どもの知る権利」と同時に「ドナーの声も反映できる」ガイドラインが必要だ。

水野礼(名古屋市立大学)「ファンタスマゴリーとしての生殖補助―「倒錯」概念から血縁主義に基づく搾取について考える―」
商業的代理母に象徴される「血を分けた子」が商取引の対象とされる「生殖の物証化」は弱者からの搾取によって支えられていると同時に、人々の血縁への欲望や幻想を煽るものである。兄弟などの身近な他者から配偶子提供や代理母を強要される事案にも同じ構造が見られ倫理的問題をはらんでいる。

入澤仁美(兵庫医科大学)「『出自を知る権利』をめぐるELSI(倫理的・法的・社会的課題)―DCを利用した当事者、出生児、医療者が望む情報の観点からの検討―」
インタビュー調査を通じて得られた、出生児が望むドナー情報、医療者が考える「出自を知る権利」の必要性を紹介した後に、6人の精子提供者の情報開示への姿勢、将来の出生児との交流の可否、彼らなりのリスクマネジメント例を掲示し、当事者が望む情報開示の実現の可能性について検討した。

稲垣惠一(日本赤十字豊田看護大学)「性の多様な家族における共助の老成学的考察」
LGBTXが子どもやそれのいる家族についてどう考えているのかについてNHK等が調査しているが、LGBTXの多くがこのことに無関心であるという結果を本研究のインタビュー調査で得ている。本発表は、この調査結果を老成学の活動指標(4分割)によって分析した上で、法、経済、理想の活動領域でのLGBTX支援が欠如しているということが、家族的共助を困難にしているということを示した。

入澤仁美(兵庫医科大学,順天堂大学)