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- 13. 遺伝子・ゲノム解析技術をめぐる倫理―子と親・家族からみた「利益」と「害」をめぐる論点の整理―
李怡然(東京大学医科学研究所)
木矢幸孝(東京大学医科学研究所)
演者報告
遺伝子・ゲノム解析技術をめぐる倫理―子と親・家族からみた「利益」と「害」をめぐる論点の整理―
李怡然・木矢幸孝(東京大学医科学研究所)
遺伝/ゲノム医療では、被検者本人だけでなく、家族・血縁者の「利益」や「害」が影響・対立することがあり、時に倫理的ジレンマを生じさせうる。今日、遺伝学的検査の実施や偶発的/二次的所見を含む結果説明に関して、様々な論拠をもとに賛否が示されているが、誰にとって・何の「利益」や「害」が主張の論拠となりうるか、個別の疾患を問わず位置づけが可能な整理が必要ではないかと問題提起した。本報告では、子どもが検査・解析対象となる場合の、親子関係に限定して論点の検討を試みた。
子と親それぞれにとっての臨床的有用性(治療、予防的な介入など医学的な意義)の有無の観点から、4つに場合分けが可能ではないかと提示し、各ケースで援用されうる論拠を、具体的な疾患に当てはめた際の事例を挙げながら、検討した。
考察として、「子の最善の利益」は、検査実施・結果説明への賛否どちらの主張にも援用されるがその内実は異なること、また、「家族にとっての利益」「個人的有用性」を論拠とした主張は、規範的な議論だけでは成立せず、各々の当事者が置かれた環境に依存した正当化とならざるを得ないと述べた。よって、これらの主張が、当事者の意向を本当に反映したものであるかどうか、慎重に確認することが重要だと示唆される。本報告では親子関係を足掛かりに場合分けの方法を試行したが、兄弟姉妹など、ほかの家族関係にも応用可能かどうかは、今後の課題である。