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  • 24. 胎児付属物は特別なものか―再生医療における医学的価値と社会的文化的価値
      神里彩子(東京大学医科学研究所)
      洪賢秀(東京大学医科学研究所)

演者報告

胎児付属物は特別なものか―再生医療における医学的価値と社会的文化的価値
神里彩子・洪賢秀(東京大学医科学研究所)

再生医療産業の拡大には、同種ヒト細胞原料を用いた再生医療等製品の開発・産業化が重要とされており、そのための環境整備等も現在国で進められている。同種ヒト細胞としては間葉系幹細胞(MSC)の利用が期待されているが、骨髄、脂肪、歯髄等に加えて、近年、臍帯、臍帯血、胎盤、絨毛膜、羊膜、羊水等の胎児付属物がそのソースとして注目されている。これらにMSCが豊富に含まれていることのほか、採取においてドナーへの侵襲性がなく、通常廃棄処分されるものであることがその理由である。しかし他方で、史料や産育習俗の全国調査の結果を見ると、胎児付属物である「胞衣」は、生まれた子の「分身」とみなされ、歴史的に長い間、特別なものとして扱われてきた。

では、現代社会において胎児付属物はどのようなものとして受け止められているのだろうか。我々は、胎児付属物について、また、胎児付属物が再生医療等製品の原材料として利用されることについて一般女性の意識を探るためにインターネット調査(対象者数1055人)を行った。本年次大会では、その結果を紹介し、現代においても胎児付属物は一定程度「特別」性を維持していることが見て取れたことから再生医療への利用においても妊婦等の当事者、そして社会に向けた配慮が必要であることを示した。