2020年12月5日(土) 10:50~12:20
ミーティングルームB(ZOOMライブ配信)

オーガナイザー
旗手俊彦(札幌医科大学)

  • 人を対象とする医薬学系研究に対する倫理審査委員会のあり方
      野崎亜紀子(京都薬科大学)
  • 臨床倫理委員会の構成と機能
      丸山英二(神戸大学)
  • 倫理審査の質の確保と委員会事務局の役割
      横野恵(早稲田大学)

オーガナイザー報告

本シンポジウムでは、医学部/医科大学の他、薬科大学やいわゆる病院等設置主体のカテゴリ-を超えて、倫理委員会を運営する際の問題と解決策の共有を目的として企画された。各シンポジストの報告の要点は、以下のようにまとめられる。

  • 薬科系大学の倫理委員会の審査案件では、医薬品/試薬を用いた薬学領域の単独研究のみにとどまらず、患者を被験者とする研究が増加傾向にあり、被験者保護に関する知見が要求されるようになってきた。
  • 医療系倫理委員会は、主として研究を審査する研究倫理委員会と、診療上の様々な問題を審査する臨床倫理委員会とに分けられる。臨床倫理委員会の審査範囲は多岐に渡り、臨床倫理委員会は当該医療実施の妥当性確保等の役割を果たしている。
  • 医療系倫理委員会の運営にあたては、事務局の役割が重要であり、倫理審査の標準化を図る上では、事務局運営の標準化が課題となる。その標準化を目的として、AMED事業として、CReP(Certified Research Ethics Committee Professionals, 倫理審査専門職)という資格認定制度が始まっている。

以上の報告の後、報告者以外の参加者も加わって、以下のような質疑応答がなされた。

  • ライブデモに関して倫理委員会で議論するべき観点として教育倫理も含まれるのではないか。ライブデモを離れても、これまで日本の生命倫理において教育倫理に関する問題意識が希薄であったのではないか。
  • いわゆる医学系指針において、人文・社会科学の有識者が委員の必須のメンバ-とされているが、科学性の審査にあたっては医学領域での専門知識が必要となること、また倫理委員会形成の歴史的経緯を踏まえると、人文・社会科学の有識者が委員長等委員会運営の中心的な役割を担うことはこれまで必ずしも多くなかったが近時、新たな動きもみられる。
  • 近く改訂・統合が予定されている研究指針では、多機関共同研究においては一括審査が原則とされている。しかし、一括審査により、審査件数が減少する委員会では、OJTとしての委員育成の機会が減少することとなり、全国レベルでみた場合に、本当に審査の質の標準化につながるのかは注視が必要。
  • CReP認定制度については、医学系大学に設置された倫理委員会以外の委員会における認知度が低い。

このような議論をふまえると、医療系倫理委員会の質の標準化を図る上では、設置主体のカテゴリ-を超えて問題意識や問題解決の経験・情報を共有できる何らかのプラットフォ-ムの形成が有用でないかというところで、本シンポジウムをまとめることができる。

旗手俊彦(札幌医科大学)