2021年11月28日(日) 10:40~12:10
ミーティングルームA(ZOOMライブ配信)

オーガナイザー
児玉 聡(京都大学大学院)

  • COVID-19 が終末期医療にもたらした影響-日本と英米における相違点と共通点
      田中 美穂(日本医師会総合政策研究機構/立命館大学大学院)
  • COVID-19 が終末期医療にもたらした影響-韓国の「延命医療決定法」の諸課題
      洪 賢秀(明治学院大学/東京大学医科学研究所)
  • COVID-19 が終末期医療にもたらした影響-台湾の法制度への挑戦と課題
      鍾 宜錚(大谷大学真宗総合研究所東京分室)

オーガナイザー報告

本シンポジウムは、COVID-19のパンデミック下、日韓台の終末期医療にどのような影響があり、またどのような問題が提起されてきたのかを明らかにすることを目的に実施された。

田中美穂氏は、COVID-19がもたらした終末期医療への影響について、法政策面と臨床面に分け、日本と英米における議論を紹介した。共通点としては、日本・英米共に関連法政策に大きな変更は見られず、また臨床においては、コミュニケーションが遮断され、ACPの話し合いや看取りの形などに影響が見られるなど、従来からのACPや終末期医療の問題がパンデミック時に浮き彫りになった。相違点としては、日本ではパンデミック時に終末期医療やACPの話し合いを促すことへの是非が議論された一方、英米では特定の集団への影響に関する議論がなされた。

鍾宜錚氏は、台湾においてCOVID-19がもたらした終末期医療の意思決定への影響や、医療現場での変化について発表した。諸外国と比べて感染状況が抑えられていることで、医療機関での治療や業務への影響は少ないものの、厳格な立ち入り規制によって、ACPに関する問い合わせと事前指示書の作成に減少傾向が見られた。また、感染の急拡大によって、医療資源の配分に関する指針改正の動きが見られ、DNR指示を不適切に使用した事例も現れた。また、検査体制がひっ迫したことで、自宅で亡くなった人に陰性証明がなく葬儀業者に断られた事例も存在していた。COVID-19によって台湾人の死生観の変化の有無や、在宅死の意義については再考する必要があると指摘した。

洪賢秀氏は、韓国社会におけるCOVID-19への対応と、終末期医療における諸課題について発表した。韓国では、終末期における延命医療に関する意思確認を延命医療決定法に基づき、AD、POLST、ACPを用いて確認するようになっている。しかし、コロナ禍における終末期医療について、次のような諸課題があげられた。COVID -19への対応のため、終末期医療が手薄になり、療養病院の患者のQOLが低下していること、延命医療決定法に関する高齢者対象のオンライン教育の実態が把握されていないこと、医療資源の分配について社会的合意を求める議論が十分でないこと、ACPの機会を確保することが難しいこと、厳しい防疫により一連の儀礼が簡略化され、哀悼なき「死」となり、グリーフケアへの対応不足、などである。

質疑では各国の法制度の詳細についての質問や、新型の感染症流行時に以前の事前指示がどこまで有効かなど、活発に議論が行われた。

児玉 聡(京都大学大学院)