2021年11月27日(土) 15:30~17:00
ミーティングルームC(ZOOMライブ配信)

オーガナイザー
旗手 俊彦(札幌医科大学)

  • 医学研究倫理審査における一括審査の課題――米国での経験と議論
      丸山 英二(神戸大学名誉教授)
  • 中央一括審査の課題と展望:運用上の視点から
      河原 直人(九州大学病院)
  • 「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」下での審査~北海道大学病院における審査体制と見えてきた課題~
      西岡 美登里(北海道大学病院 医療・ヘルスサイエンス研究開発機構)

オーガナイザー報告

本シンポジウムでは、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」(令和3年6月30日施行)の項目中、多機関共同研究の一括審査に焦点を当て、既に一括審査を導入している臨床研究法上の特定臨床研究の審査の現状と課題を参考とすることにより、指針上の一括審査を進める上での課題について取り上げた。

第1シンポジストの丸山は、米国における一括審査の理論と実践を紹介した。米国では、1970年代以降コモン・ルール等により人対象研究に対するIRBの審査が義務付けられたが、間もなくIRB毎の審査にばらつきがあることの問題点が明らかとなり、その解決策として単一IRB(SIRB)、中央IRB(CIRB)による一括審査が導入された経緯が説明された。その上で、SIRBの質確保の取り組みとして、NCI CIRBにおけるIRB委員の質確保やIRBと研究者との対話確保などを紹介した。

第2シンポジストの河原は、一括審査の現状と課題について報告した。河原はまず、AMED中央IRB促進事業として実施された九州・沖縄地域のCRBの意見交換会等の内容を紹介した。それによれば、審査手数料や委員会事務局、研究支援等の他部署との役割分担をどのようにするかなど共通の課題を抱えていることが提示された。また、九州・沖縄地域において現在進行中の厚生労働省事業におけるCRB間のピアレビューの取組を紹介した。さらに、倫理指針上の一括審査について河原らが実施した九州・沖縄地域の大学病院等を対象としたアンケート調査の報告も行われ、その結果から、依頼元の要件確認や審査手数料等にばらつきのあることがあらためて問題となっていることが明らかとなった。これらの状況に基づき、倫理審査の一括審査を進める上では、倫理審査委員会の質の向上及び透明化を図ることが重要であると指摘した。

第3シンポジストの西岡は、最初に臨床研究法および生命・医学系指針それぞれに基づく一括審査を比較し、一括審査の位置づけや審査方式の違いを明らかとした後、北海道大学病院の審査体制と課題について論じた。まず一括審査を受託する側としては、多様な研究実施体制、とりわけ研究協力機関等「研究機関」に該当しない施設の役割が明記される必要性を論じ、共同研究機関における実施体制の具体的把握方法として「研究責任者及び研究機関の要件確認書」を研究代表者がまとめて生命・医学系研究倫理審査委員会に提出する手続きを定めたと報告した。他方、一括審査を委託する側としては、一括審査を手がけた委員会により「審査結果通知書」の記載項目が異なり、例えば、審査の過程や委員の出欠状況等、委託する側として必要とする情報を得られない場合があること、また侵襲性の判断やインフォームドコンセントを受ける手続きの選択等に関して委員会毎の判断が異なることなどの問題点を指摘した。

その後シンポジスト以外の参加者と総合討論を行った。その結果、シンポジウム開催時点では、生命・医学系指針に基づく一括審査を委受託した研究機関は非常に少ない現状を確認した。その上で、一括審査を進める上では、倫理審査委員会の運営や手続き・書式に関する標準化、また倫理審査委員会の質保証が課題であるとの認識を共有した。

旗手 俊彦(札幌医科大学)