2021年11月27日(土) 10:40~12:10
ミーティングルームB(ZOOMライブ配信)

オーガナイザー
山本 圭一郎(国立国際医療研究センター)
松井 健志(国立がん研究センター)

報告者
河村 裕樹・鈴木 将平(一橋大学・国立国際医療研究センター)
高井 ゆと里(石川県立看護大学)
渡部 沙織(東京大学医科学研究所)

オーガナイザー報告

本ワークショップでは、厚生労働省等が掲げる「希少難治性疾患の克服」とは何かを生命倫理学の観点から問い直しつつ、従来から着目されていた、「現在の患者」「将来発症するかもしれない患者」「着床前・出生前・ヒト胚のゲノム編集」に関係するELSIだけでなく、婚前の個人の選択や社会制度のELSIにも着目して一連の報告を行った。

第一に、世界同時進行的に進められている、希少難治性疾患のELSI研究の現在について主に海外文献に依拠しつつ論点整理を行った(河村裕樹会員発表)。

第二に、希少難治疾患の治療ならびに治療法の開発に要する費用の公的負担の正当化に関わる政治哲学・倫理学的な議論について発表を行った(高井ゆと里会員発表)。

第三に、1970年代以降、常染色体劣性遺伝病の子どもが生まれる確率を知るために欧米を中心に行われてきた保因者検査の動向等の文献調査を行い、発表を行った(鈴木将平会員発表)。

最後に、希少難治性疾患のELSIに関する国内の多様なステークホルダーを対象とした探索的な質的研究に基づいて発表を行った(渡部沙織会員発表)。
4つの発表の終了後、オンラインで参加している他の学会員(フロア)も交えて質疑応答を行った。質問はいずれも的を射たものであった。その主なものを挙げると、「運と責任という政治哲学的な観点からすれば、親の選択によって引き起こされる子の障害等についてはどう考えるべきか」、「QALYの導入についてどう考えるべきか」、「患者が望む研究を進める仕組みを考案して導入してはどうか」、「製薬企業の公的な責任の問い直す必要性があるのではないか」といった質問があった。これらの質問を受けて発表者からは、例えば「小児も含め、疾患の程度、遺伝子変異によって研究開発が行われず、ますます取り残されるという不公正に関する問題が起こっている。マジョリティ対マイノリティの問題だけではなく、マイノリティのなかのマイノリティにも目を向けていかないといけない」といった議論も展開された。ご参加・ご質問いただいた会員の皆様のおかげで、当日はこのように活発な議論が展開できた。感謝申し上げる。

山本 圭一郎(国立国際医療研究センター)