2021年11月27日(土) 13:50~15:20
ミーティングルームB(ZOOMライブ配信)

オーガナイザー
小門 穂(神戸薬科大学薬学部)

報告者
小門 穂(神戸薬科大学薬学部)
洪 賢秀(明治学院大学社会学部付属研究所)
柘植 あづみ(明治学院大学社会学部)

オーガナイザー報告

第三者からの配偶子の提供を伴う生殖補助技術を受ける、と当事者が決める際に、なにが意思決定の要因となるのか。その技術を提供するならいかなる制度が必要なのか。提題者3名は、技術の受容、拒否、躊躇に焦点を当て、卵子提供により子を得た人、精子や卵子の提供に関わる医療専門家に対するインタビュー調査、さらに精子提供によって生まれた人とその支援者、医療者等を講師とするオンライン公開セミナーを行ってきた。本ワークショップでは、「卵子提供で子どもを持った人4名の語り」(小門穂)、「配偶子提供で子どもをもつことを支援する立場の人4名の語り」(洪賢秀)、「精子提供で生まれた人5名の語り」(柘植あづみ)とその分析を簡単に紹介し、参加者とのディスカッションを行った。

卵子提供で子どもを持った人は、自己卵子の不妊治療が奏功せず、海外滞在経験や家族など身近に海外在住者がいることから、卵子提供を受容できる選択肢と捉えたこと、子どもには提供について積極的に知らせようとしていることを報告した。支援者・専門家の語りからは、多様な家族のあり方を認める土壌が日本社会には不足していること、子どもが出自を知ることの権利の確保の重要性、配偶子提供を通して親となる人への支援やドナーの保護の必要性が指摘されたことを報告した。精子提供で生まれた人は、親の離婚や病気、血液型不一致などを契機として、成人後に出生の事実を知り、その後に親との関係が悪化していた。もっと早い時期に事実を知らされたかった、その技術を選んだ親が子の気持ちに寄り添ってほしいと望んでいた。配偶子提供について親が子に知えることと提供者の個人情報にアクセスできる制度の重要性が伝えられた。

ディスカッションでは、2020年の生殖補助医療技術と民法の親子関係の特例に関する法律によって認められた提供を伴う生殖補助技術の実施の課題と生殖ツーリズム等について、その利用を希望する当事者と対話し、その思いを知って問題点を指摘する必要性、また、さまざまな立場からの情報発信と支援の必要性などが議論から抽出された。
(本研究は、科研費基盤B「生殖医療技術の利用における選択─新しい技術の受容・拒否・躊躇」(20H01408、研究代表者:柘植あづみ)の助成を受けた。)

小門 穂(神戸薬科大学薬学部)
洪 賢秀(明治学院大学社会学部付属研究所)
柘植 あづみ(明治学院大学社会学部)