日本生命倫理学会

書籍紹介・コラム

書籍紹介

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在宅ケアの悩みごと解決マップ  ケースで現場の問題「見える化」します

堂囿俊彦・角田ますみ・北西史直・中村美智太郎 編著、医歯薬出版株式会社、2023年

 本書は、在宅医療・ケアの現場において尊厳が問題となる16のケースを取り上げ、それらの問題を見える化し、検討する上で必要な考え方を分かりやすく提示しています。さらに、こうした問題について話し合うための方法も解説しています。みなさんがよりよい解決策を見つける上で本書をお役立ていただければ幸いです。

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「人間の尊厳」とは―コロナ危機を経て―

2023、日本学術協力財団

 本書は、日本学術会議哲学委員会主催の公開シンポジウム「コロナ禍における人間の尊厳―危機に向き合って―」(2021年12月)を基に編まれた論集である。執筆には多くの本学会会員も参加し、「人間の尊厳」概念を軸にコロナ・トリアージとパンデミックで浮上した諸問題を多角的に検討している。

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ここからスタート アドバンス・ケア・プランニング – ACPがみえてくる新しいアプローチと実践例

角田ますみ編著、へるす出版、2022年

  本書は、ACPに「START(Support, Timing, Action, Relation, Talking)」と「エフェクチュエーション」という新しい視点を取り入れたACPの実践ガイドです。
 本書の読みどころは、ACPをSTARTという視点でマッピングし、ACPをいつ・誰が・どこで・何を・どんなふうに行うのか、さまざまな側面から解説しています。

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死の定義と〈有機的統合性〉—IntegrityとIntegrationの歴史的変遷—

小宮山陽子著,勁草書房,2022年

 本書の出発点は、私が看護師としての臨床経験を通して抱いた、以下の疑問にあります。—「脳の機能を不可逆的に喪失した者」とは重度の脳機能障害患者にほかならない。なぜ、その患者が死者とされるのだろうか。―本書は、この問いへの答えを求めて執筆した博士学位論文を基に、加筆修正したものです。

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終末期の意思決定 コロナ禍の人生会議に向けて

冲永隆子著、晃洋書房、2022年

 本書は、私の終末期医療と事前指示・アドバンス・ケア・プランニング(ACP)関連の博士学位論文をベースに、コロナ禍に突入した2年間の協力研究者との活動報告および今後の課題をまとめた内容です。以下、協力研究者の秋葉峻介氏の書評と25年来の恩師の加藤尚武氏の書評(感想)に応える形で本書を紹介したいと思います。

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相談事例から考える研究倫理コンサルテーション

松井健志 監修・編著/山本圭一郎・伊吹友秀・井上悠輔 編著、医歯薬出版、2022年10月

 本書では実際に各所属機関等で研究倫理コンサルタントとしての役割を担う研究者ら(この中には医師や看護師から法学や倫理学の研究者までさまざまな専門分野の者が含まれている)が集まり、架空の研究倫理の相談事例(もちろん、その中には現実の問題に端を発するものも含まれる)をもとに、そのような相談を受けた場合に注目すべきポイントや参照すべき法・指針・宣言等をピックアップしながら、最終的に自分(たち)であればどのような助言をするだろうかというところまで議論を展開している。

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こわれた絆――代理母は語る

ジェニファー・ラール/メリンダ・タンカード・リースト/レナーテ・クライン(編)、柳原良江(監訳)、生活書院、2022年10月25日

 これまで代理出産における当事者のうち、代理母や卵子ドナーの経験が語られることは、殆どありませんでした。一般的にこれらの当事者たちは、契約により事実を公にすることを禁じられているためです。
 本書は代理母や卵子ドナーとなることで心や体に被害を被った方々が、自分と同じような苦しみを負う女性を増やさないよう、勇気を振り絞ってあげた声から成る証言集です。

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生きられた障害ー障害のある人が、妊娠、出生前検査、親や子どもについて語ったこと

二階堂祐子著、洛北出版、2022年

 本書は、障害のある人に妊娠、出生前検査、親や子どもについて尋ねたインタビュー調査にもとづいています。私がお話を伺った方々が、自分の身体にかかわる経験をどのように語ったか、それらの経験の幼少期の記憶はどのようなものか、出生前検査の存在を知った時にイメージした「胎児」とはどのようなものかなどを検討することを通して、出生前検査の文脈で診断される「障害」を〈名としての障害〉、生きている人の経験が織り込まれた「障害」を〈生きられた障害〉と名づけ、それぞれが用いられる文脈ごとに複数のはたらきをもつことを明らかにしています。

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狂気な倫理-「愚か」で「不可解」で「無価値」とされる生の肯定-

小西真理子・河原梓水編著、晃洋書房、2022年

 本書のコンセプトは、これまで「正常人」たちの言葉や思考を押しつけられていた「狂人」たちが、正常人の社会から奪った「理論」という武器を手にすることで、みずからの言葉と思考をもって「狂気」の側から反撃するというものです。

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エンドオブライフケアの臨床倫理

箕岡真子著、日総研出版、2020年

 ACPの歴史的背景から理論・実践事例まで網羅している。第1章は、患者の自律の権利確立の動きに焦点を当て、エンドオブライフケアにおける臨床倫理の役割と、その歴史的発展の軌跡をたどる。第2章は、エンドオブライフケアの倫理的問題に対処するアプローチとして、「ACP」と「倫理コンサルテーション」の基礎と実践について。第3章は、悪性腫瘍や慢性疾患、認知症のケースを通じて、エンドオブライフケアの倫理的問題解決の基本的考え方を知ることができるように構成されている。

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抜け殻仮説への挑戦-認知症の人の「自律」の概念を考える

箕岡真子著、三省堂書店、2022年

 認知症になると抜け殻になってしまい、自分では決められないのか―「自律」は自己決定と結びつき、現代の医療現場の意思決定の中心的価値である。本書は、自律の持つ「正」と「負」について論じ、自律を一旦解体し、その後、自律を統合する再概念化に挑んでいる。そして、自律の概念には“ゆらぎ”があることを指摘し、これまで社会が自明としてきた排除のためのボーダー(線引き)を、「インクルーシブ」(包み込む)にするためにはどうすればいいのかを問うている。

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看護学テキストNiCE看護倫理:よい看護・よい看護師への道しるべ 改訂第3版

小西恵美子編著、南江堂、2021.1

 本書の初版は2007年です。当時は、国内に看護倫理の教科書はなく、欧米や他職種(医師・生命倫理学者)の知識に頼っていました。看護職である著者一同は、日本の社会と看護・医療に即した看護倫理のテキストを自分達で著し、看護倫理の枠組みと諸概念を示したいと考え、この本を書き下ろしたのでした。以来、日々の看護実践を見つめた倫理の書として、学生のほか教育者・実践者にも広く親しまれています。

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スローエシックスと看護のアート:ケアする倫理の物語

Ann Gallagher著 / 宮内信治・小西恵美子訳 、 南江堂、2022年

 EthicsにSlowを組み合わせた「スローエシックス」は、6つの要素―「感受性」「連帯」「スペース」「持続可能性」「学問」「物語」をもつ。それぞれについて、実際にあったケアの「物語」 を中心に考察し、効率や新規性が重視される医療・ケアとその倫理を、「目先に囚われずに深く状況を見る」、「過去の知に立ち返る」、また「持続可能な」ものへと進めていくよう 呼びかける。その主張を、日本の小説を含む多数の文献から裏付けている。

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合成生物学は社会に何をもたらすか

島薗進/四ノ宮成祥 編著
木賀大介、須田桃子、原山優子 著
専修大学出版局、2022年

 本書は、先進生命科学が引き起こす倫理的、法的、社会的問題などについて合成生物学の面から焦点を当てたものです。東京大学名誉教授の島薗進先生と共同編集させていただきました。第1章から第4章の内容は、以前ゲノム問題検討会議の場において発表、議論したもので、今回その内容をもとに加筆、情報付加を行い、1冊の本としてまとめ上げました。

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病と健康をめぐるせめぎあい—コンテステーションの医療社会学

佐藤純一、美馬達哉、中川輝彦、黒田浩一郎編、ミネルヴァ書房、2022年

 本書は、私もメンバーの一人である「医療社会学研究会」による研究成果を出版したものである。情報委員会から、書籍紹介の機会をいただいたので、社会学の知見が生命倫理学とどう関わるのかについて、日ごろ思っていることを書き留めておく。
 本学会には、生命倫理学という分野が領域横断的な性質を持っていることを反映して、さまざまな分野の会員が所属している。そして、本書は、(医療)社会学の書籍ではあるものの、生命倫理学を考える上で、重要なポイントが含まれている。

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臨床倫理の考え方と実践:医療・ケアチームのための事例検討法

清水哲郎・会田薫子・田代志門 編著,東京大学出版会, 2022.1

 臨床現場で医療・ケアを進めていく際に起きる「どうすればよいか」という問いは、倫理的な問いであり、臨床倫理がその問いに対応します。医療・ケア従事者と人文・社会系研究者(臨床倫理プロジェクト)とが共同で、こうした問いにどのように取り組むかを30年かけて開発してきました。その成果をまとめた本書を「臨床倫理事例検討法の決定版」としてここにご紹介します。 

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〈反延命〉主義の時代 ー安楽死・透析中止・トリアージ

小松美彦・市野川容孝・堀江宗正 編著、現代書館、2021年

 本書は、「人生の最終段階において無益な延命治療をおこなうべきではないとするような風潮」を「〈反延命〉主義」とし、それを批判的に解明することを目的とするものである。 

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『続・新型コロナウイルス感染症(COVID-19)- 菅内閣と緊急事態宣言』

飯田泰士 著、現代企画室、2021年

 本書は、『新型コロナウイルス感染症(COVID-19)』(現代企画室、2020年)の続編です。そして、本書では、国内外の資料に基づき、新型コロナウイルス感染症に関して、菅内閣発足時から2回目の緊急事態宣言の終了時までのことを中心に、述べました。   

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命をどこまで操作してよいかー応用倫理学講義

澤井 努 著、慶應義塾大学出版会、2021年

 本書は、私が2017年に前著(『ヒトiPS細胞研究と倫理』、京都大学学術出版会)を出版して以降、先端科学技術を開発する研究機関で取り組んできた生命倫理学研究の成果です。本書が扱う先端科学技術は、社会を大きく変えるインパクトを持っているだけに、私たちはまさに今、(本書の書名にもなっている)「命をどこまで操作してよいか」という喫緊の問いに取り組む必要があると考えています。

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みんなのやさしい生命倫理「生老病死」

谷田 憲俊著,NPO医薬ビジランシセンター,2021年

 本書は、著者が編集委員を務める医薬品情報誌『薬のチェック』に長年連載していた「みんなのやさしい生命倫理」であり、以下のような構成となっている。
 序 章 個人と社会のはざまで-どうして人を殺してはいけないの?
 第1章 死と生、愛と性-いのちが生まれる土壌
 第2章 出会いからカップル成立まで-何に惹かれるか
 第3章 婚姻-ひかれあう生命
 第4章 生まれる人間の尊厳とは-人工妊娠中絶と生命倫理
 第5章 生殖補助医療-生命倫理より技術が先行
 第6章 延命治療とその拒否-どこからが“助けるべき生命”か