服部 健司
授業・研修は密室で行われます。たとえシラバスが公開されていたとしても、授業が実際にどう行われているのか、想像することすらできません。大会報告にあっては、時間が限られ、教育の実際をその場で再現することはできません。概括的な紹介の域をこえた発表を行うのは困難です。「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きてるんだ」というのはテレビドラマの有名な台詞ですが、教育の現場は密室の教室です。より望ましい教育のあり方を探り、手法上の具体的な工夫を重ねるためには、こうした閉鎖的な状況からわたしたちの教育実践を解き放ち、協働する場を開くことがあったらよいのにという考えのもと、本部会は立ち上げられ、2020年度には12名の会員の参加を得ました。
当初、小学校等で行われている「研究授業」に倣い、部会員限定でお互いの授業を参観可能なものとして開放し合い、授業後に意見交換することを活動の柱とする予定でしたが、コロナ禍によって縮小変更を余儀なくされました。本年度の活動はすべてZoomで行うこととし、毎月第一金曜夜、2時間の定例開催といたしました。春から夏にかけては(待ったなしの)遠隔授業を行う上での工夫やコツをめぐる発表と意見・情報交換を、秋以降は各部会員の教育実践の報告を行うことを月例会の柱といたしました。挙手制で担当したのは各回1~2名の部会員で、時間切れになることなく、質疑応答、意見交換を十分に行うことができました。けっして概括的な紹介にとどまらず、きわめて具体的な内容の、かゆいところにまで手が届く情報共有、そして学び合う姿勢でのやりとりがなされました。またZoomの使用により、九州から北関東まで地理的に離れている部会員の参加が容易でありました。少人数で小回りのきく、定期開催の部会ならではの活動様態と受け止めています。
部会員はこうして年間を通して数々の実践知と仲間とを手に入れることができましたが、さらに多くの会員にご参加いただいて知と輪をふくらませるにはどうしたらよいのか、本学会会員に諸成果を還元する機会をどのようにもうけたらよいのか、が課題として残りました。