- 日時:2019年12月7日(土)16:10~17:40
- 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合講義棟・第3小講義室(E会場)
- 座長 金澤麻衣子(東北大学病院)
- 16:10~16:30
「格差利用」と「医療の性質」から考える生殖医療ツーリズム規制の方向性
今井竜也(金沢大学) - 16:30~16:50
配偶子提供の再考
-匿名提供の困難化を足がかりに-
石井哲也(北海道大学) - 16:50〜16:55
時間調整 - 16:55~17:15
「胎児虐待」言説が抱える危うさの検討
-特に、妊娠女性に対する抑圧の視点から-- 中井祐一郎(川崎医科大学)
- 比名朋子(神戸市看護大学)
- 17:15~17:35
死後懐胎の今後
大橋範子(大阪大学) - 17:35~17:40
座長総括・時間調整
座長報告
一般演題講演Ⅳ「生殖に関する倫理」では、以下の3つの演題が発表された。
第1題、今井達也氏の『「格差利用」と「医療の質」から考える生殖医療ツーリズム規制の方向性』では、近年注目されている医療ツーリズムについて、「医療技術としての性質」による個別的な対策、「格差利用」という全般的に共通する問題の2点に着目した報告がされた。「生殖医療」の性質には主に、自然な生殖のプロセスを阻害する要因の治療、技術利用(不妊治療・人工授精・体外受精)、出生児の選別に関する技術利用(着床前・出生前診断・男女産み分け)、生殖のプロセスに第三者を介在させる技術利用(配偶子提供・代理出産)、(場合によっては「産まない」という選択肢もありえる)に類型される。医療ツーリズムでは必然的に、技術としての性質、利用者の直面する諸問題、海外渡航で行われる場合という「格差利用」という共通点をもつ。様々な性質の医療(技術)が混在している中で、海外でそれを利用する場合の規制の方向性について考察され、医療ツーリズムの利用者の累計化の必要性や、規制の判断基準や実効性について議論がなされた。
第2題、石井哲也氏の『配偶子提供の再考-匿名提供の困難化を足がかりに-』では、第三者から提供を受けた配偶子を用いる懐胎(Donor Conception:DC)について、法規制の下にDCを許容する国があり、配偶子提供者の匿名性確保を重視する国と、DCを経て生まれた人たちの出自を知る権利を重視する国に大別されている。国内では、各組織内での指針や見解について紹介されたが、DC実施は国として一貫性がなく、DCから生まれた人や、配偶子提供(希望)者、親になりたいカップルらを惑わせ、医療者も整理できていない現状があった。匿名提供の是非と、DCのあるべき制度等について議論がなされた。
第3題、中井祐一郎氏の『「胎児虐待」言説が抱える危うさの検討-特に、妊娠女性に対する抑圧の視点から-』では、「胎児虐待」論について、”人権保護”という視点と、自己堕胎を意味するものも現れるようになり、医療者側の姿勢が問われていることを提起した。「胎児虐待」の用語とそこから導かれる過程について、日本周産期メンタルヘルス学会の診療ガイドを例に考察し、胎児虐待論が飛躍されており、公的な立場からの「胎児虐待」概念の使用には抑制的姿勢が必要であると示唆された。本セッションでは、多くの方が参集し活発な議論が展開された。