• 日時:2019年12月7日(土)13:50~15:20
  • 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合講義棟・法学部第2講義室(B会場)
  • オーガナイザー:
    瀧本禎之(東京大学)   
    長尾式子(北里大学)
  • 患者相談・臨床倫理センター(C-PRACE)における倫理コンサルテーションの実践
    瀧本禎之(東京大学医学部附属病院)
  • 倫理学者として大学病院で倫理コンサルテーションをすることの理想と現実
    金城隆展(琉球大学医学部附属病院)
  • 地域における倫理コンサルテーションの課題
    竹下啓(東海大学)
  • 病院の外部者が実践する倫理コンサルテーション
    —理想と現実-           
    長尾式子(北里大学)

座長報告

臨床現場における倫理的問題の解決を支援するための仕組みとして、倫理コンサルテーション(Clinical Ethics Consultation: CECと記す)が近年、注目されている。CECでは、倫理理論や倫理原則を用いて現場の問題を検討することが一般的である。しかし、当事者の感情や利害を含む関係性が複雑に絡む状況の中で、倫理的に妥当であっても当事者にとっては釈然としない結果となることもあろう。また、当事者が納得してもそれが倫理的に適切であるとは限らないかもしれない。あるいは立ち上がったばかりのCECにあげてほしい相談がこないことに悩んでいることもあるだろう。そこで、本セッションは「倫理コンサルテーションの再検討-臨床倫理学と臨床倫理の実践-」と題して、CECの学問(理想)と実践(現実)について議論した。瀧本氏(東京大学)は、10年間のCEC活動を通して、CECの仕組みづくり、倫理支援活動の経験について報告があった。続いて金城氏(琉球大学)は、医療従事者ではない臨床倫理学の専門家が臨床現場の問題に支援をする際の理想と現実について発表があった。加えて、竹下氏(東海大学)は地域中核かつ特定機能病院の倫理支援が地域医療ケアの倫理支援を展開する際の理想と現実について発表があった。最後に長尾(北里大学)が、病院組織に属さない者が倫理支援する際の理想と現実について発表した。

その後の総合討論では、相談者が医療従事者だけではなく、患者や家族からの相談をCECが受けることについて、地域在宅医療ケアに従事する医療者の倫理的問題の相談する場や議論する機会がないことの指摘があった。また、倫理支援の活動を先導する者がいなくなった場合におけるCECへの依頼が継続した仕組みとなるための工夫について議論した。本シンポジウムは、CECの仕組みが外部評価により不可欠となってきた今日、CECが臨床現場の倫理活動であると同時に、学術的基盤ある活動となるための重要な議論の場となったといえる。