- 日時:2019年12月8日(日)10:40~12:10
- 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合総合講義棟・第2小講義室(D会場)
- オーガナイザー:
稲葉一人(中京大学) - 報告者:
- 松村優子(京都市立病院)
- 恋水諄源(市立福知山市民病院)
- 武ユカリ(関西医科大学)
- 峯村優一(京都府立医科大学)
- 事例相談者:
細越万里子(がくさい病院)
座長報告
本ワークショップでは,ある病院と地域の連携が問題とする事例を提示して、現実の医療や介護の現場の専門職から見た景色を共有し、それぞれの立場をお互いに考え合うという企画である。
臨床現場や現場間で生じた倫理的問題は多数あるが、これを公に話し合う場は現実には少ない。そのために、専門職自身が十分な支援を受けることなく孤立し,結果的に独断・独善的な判断を下し、患者にそのしわ寄せがきているのではないかいう問題意識がある。病院には、院内倫理コンサルテーションチームの働きが報告されているが、実際の事例は、前方病院と後方病院、病院と在宅や施設をまたいで生し、これを検討する場や機会がない。地域包括システムを提唱されても、これを結びつける仕組みや人材、あるいは、倫理のコンセプトの共有がなされていない。
事例は、細越万里子(がくさい病院)さんから提示された。
事例を中心に、松村優子(京都市立病院)さんから急性期病院としての悩み、恋水諄源(市立福知山病院)さんから慢性期病院(医師)としての悩み、武ユカリ(関西医科大学)さんから在宅療養の観点からの悩み、そして、峯村優一(京都府立医科大学)さんから倫理研究者としてのコメントをいただいた。その中から、発表者や会場から現行制度上できることはなにかも模索された。
本事例を中心としたそれぞれの立場を踏まえたディスカッションからは、医療・介護の今日的な問題が浮かび上がった。すなわち、医学的な対象としての患者像では、医学的適応を中心として医師が主役として位置づけられていたが、Jonsenの4分割の提案等を経て、主体性のある社会的存在としての患者像が強調され、患者の意向やQOL、それ以外の社会的情報も多職種で考えることになった。しかし、これとて、多くはある特定の病院の多職種であり、本来患者が生活基盤とする医療・介護、そして生活を支える多職種が関わったものではないかった。本ワークショップは、まだ、解決の姿を明確には出せなかったが、来る時は、このような生活を基盤とした患者、あるいは、人を支える倫理的なつながりと対話が必要とされること、その際の課題や工夫と限界は示すことができたと考えている。