- 日時:2019年12月7日(土)11:10~12:40
- 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合講義棟・第1小講義室(C会場)
- オーガナイザー:
清水 哲郎(岩手保健医療大学) - 報告者:
- 会田薫子(東京大学)
- 岩城隆二(大阪赤十字病院)
- 日笠晴香(岡山大学)
- 田代志門(東北大学)
- 三浦靖彦(東京慈恵会医科大学附属柏病院)
座長報告
臨床倫理プロジェクトが90年代終り頃から研究開発を続けてきた、臨床倫理の事例検討を支援するツールである検討シートが、ほぼ完成した。そこで本セッションを、開発の背景・歴史を振り返り、最新版について説明した上で、参加者有志にも参加していただいて、モデル事例についての事例検討を公開で行い、使い勝手を評価するなど検討シートの今後の進化にむけた共同検討の機会とするという趣旨で企画した。
まず、オーガナイザーの清水哲郎から背景にある臨床倫理に関する考え方と検討シート開発の経緯を振り返る報告があった。考え方としては、①意思決定プロセスに関する「情報共有-合意モデル」と、② いのちの二つのアスペクトである「人生と生命」が柱となる。検討シートの様式は進化してきたが、一貫して①②を具体的な事例検討に活かそうとするものであった。
次に、報告者の会田薫子が、最新版臨床倫理事例検討シートについて説明した。同シートは、①事例提示、②益と害のアセスメント、③カンファレンス用ワークシートの3種から構成されており、このうち①事例提示は、当該患者本人のプロフィール、時間経過に沿った事例の記述(本人の人生に関する情報を含む)、および重要な分岐点(分かれ道になっているところ)の指摘を含む。②益と害のアセスメントは、選択肢間を比較して、最善のものを見出すためのツールである。③カンファレンス用ワークシートは、医学的妥当性をまずおさえ、次に本人および家族の思い・意向をまとめ、検討し、合意を妨げる点、および社会的な視点で検討に影響しそうな要素に目を配った上で、医学的妥当性と本人の人生・意向とを併せ、本人の人生にとっての最善を検討する・・・といった流れとなっている。
続いて、報告者として岩城 隆二、日笠 晴香、田代 志門の各氏がそれぞれの立場から臨床倫理検討シートとの関わりや評価を提示した。
ここで、以上の登壇者に加え、フロアから若干名の参加を得て、モデル事例についての共同検討を行った。また、検討の所々で、フロアからの意見を求めた。モデル事例は、積極的な治療が有効でないことを理解し、最後の日々を苦しくなく過ごしたいと考える本人と、積極的治療継続を望む等の気持ちをもってきた家族の間で、モルヒネによる疼痛コントロールについての温度差が生じており、今後本人が意思表明できなくなると、家族の反対により標準的な疼痛コントロールができなくなることを医療ケア従事者が心配している。というものであり、家族をどう理解し、対応するかが論点となった。
最期に、報告者の三浦 靖彦氏が講評を行い、4分割法との比較についての経験も交えて、検討シートの今後への課題等を提示した。