• 日時:2019年12月8日(日)14:20~15:30
  • 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合
  • 座長:霜田求(京都女子大学)
  • 14:20~14:40
    医療現場における自律の尊重の再検討
    田淵綾(九州大学)
  • 14:40~15:00
    新たな「自律」概念と「自律尊重原則」 
    -生命倫理における「自律」の新たな意義の可能性-
    石田安実(神奈川大学)
  • 15:00~15:20
    認知症患者は自律的という理解に問題はないのか
    瀬川真吾(ミュンスター大学)
  • 15:20~15:30
    座長総括・時間調整

座長報告

本セッションでは、以下の3人の演者による発表が行われた。

田淵綾氏(九州大学)は「医療現場における自律の尊重の再検討~木村敏を手がかりに」という題目の発表で、ビーチャム/チルドレス『生命医学倫理』の「自律の尊重」原理においては「他者との関係が軽視されている」ことを踏まえ、「自己と他者の相互関係」および「自己と他者の生命の根源」に着目しつつ精神科医・木村敏の議論を手がかりに、自律の尊重の再検討を試みる。そこでは、「自律の尊重」が医療現場における患者・家族・医療者の平等な「生命一般」の相互関係のもとにあるものとして捉え直され、「言語を使用する理性的な患者を前提とした自律の尊重」の限界を乗り越える視座が提示される。

石田安実氏(神奈川大学)は「新たな「自律」概念と「自律尊重原則」―生命倫理における「自律」の新たな意義の可能性―」という題目の発表で、「自律」の尊重がインフォームド・コンセント(IC)取得の正当化の根拠であるという説に対する批判(J.S.TaylorとN.Stoljarの議論)を取り上げ、その妥当性を検討した上で、自律概念の新たな理解の可能性を示唆する。その骨子は、IC取得における「情報要件」(医師から患者に情報が正しく提供されねばならない)だけでは自律の確保には十分ではないこと、それに加えて「認識論的要件」(患者の自己意識や判断能力がある程度正しく機能していなければならない)を踏まえて患者をサポートすることが求められること、というものである。

瀬川真吾氏(ミュンスター大学)は「認知症患者は自律的でいいのか」という題目の発表で、「認知症患者をいかに尊重することができるのか」、その際に「自律の尊重原理を適切な原理として用いることができるのか」という問題設定を行い、検討を試みている。そこでは、認知症患者の自律を「段階的・関係的」に捉える立場に対して、「同意の拒否としての自律は尊重されねばならないという前提」の立場から異論が提示される。

それぞれの発表に対して会場からさまざまな質問が出され、演者との間で熱心な議論が展開された。