• 日時:2019年12月8日(日)14:20~15:30
  • 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合総合講義棟・第1小講義室(C会場)
  • 座長 大西基喜(青森県立保健大学)
  • 14:20~14:40
    患者遺伝情報に対する家族アプローチによる守秘義務の再考
    高島響子(国立国際医療研究センター)
  • 14:40~15:00
    生命保険と遺伝情報
    -オーストラリアにおける規制導入の経緯を中心に-
    横野恵(早稲田大学)
  • 15:00~15:20
    ゲノム編集をめぐるドイツの近時の議論
    -ドイツ倫理評議会声明を素材に-
    三重野雄太郎(佛教大学)

座長報告

当セッションでは、3演題が発表された。いずれも遺伝情報に関わる倫理的諸課題について、他国の取り組みを紹介したものである。

1. 患者遺伝情報に対する家族アプローチによる守秘義務の再考

英国での家族アプローチの考え方を紹介し、本邦での適応可能性について検討したものである。

患者遺伝情報は家系員にとっても重要であるが、患者と家系員の意向が食い違う問題が生じうる。医療側に守秘義務の範囲について、Parkerらが遺伝情報の家族アプローチを提唱している。これは家系的要素を守秘義務の対象としない考え方で、英国では議論が活発に行われており、これらの論点の整理と、わが国における適用について検討された。

フロアから、現場の患者-医療者関係を損なうとの懸念が表明されたが、低浸透率の関連遺伝子も含め遺伝情報がますます豊富になる状況で、本邦でもこの議論が活性化すべきものと思われる。

2. 生命保険と遺伝情報-オーストラリアにおける規制導入の経緯を中心に-

豪州で一定の保険商品に遺伝情報の利用禁止が導入された経緯と、本邦の課題を検討した。

遺伝情報に基づく差別の一つとして、生命保険における遺伝情報の取扱いがある。保険者が加入希望者に遺伝学的情報を要求し、その結果で保険加入や条件につき不平等な対応を行う実態がある。本邦でも保険会社の約款の記載等について議論となったが、対策は宙に浮いている。演者は現況を概観し、豪州における遺伝情報利用の推移、影響等を紹介・分析し、ルールのあり方を示したものである。

遺伝情報の差別は広くみられる現象で、保険の差別は重要な課題である。本邦の課題解決は遅延しており、他国の試みの紹介は一石を投じ、貴重な発表である。

3. ゲノム編集をめぐるドイツの近時の議論-ドイツ倫理評議会声明を素材に-

ドイツ倫理評議会声明の紹介である。

ゲノム編集は国際的に議論が必要な課題である。ドイツでは胚保護法が制定され、ヒト受精卵の取扱いを厳格に規定してきたが、2019年にドイツ倫理評議会はゲノム編集について声明を発表し、ヒト生殖系列は不可侵でなく、一定の要件下に認める立場を表明した。演者はこの声明の概要、論点を確認し、ドイツの最新の動向を詳細に紹介した。

ゲノム編集は本学会でも広く議論されており、その倫理的課題は極めて多い。ドイツの状況の紹介はわが国の方向を定める上でも参考になるだろう。