臨床研究法、研究倫理指針etc… 医学研究の規制が進む今こそ知っておきたいこと。被験者を保護しながら、適正に研究をするにはどうすればよいのか。国内で起きた15の事例を検討し、研究のあり方を考える。巻末資料では、研究倫理にまつわる国内事例66件を紹介。

本書「はしがき」より抜粋

……本書を企画した際、強く意識をしたのは、医学研究のあり方をめぐって、日本でこれまでどのような出来事があったのか、またそれをめぐってどのような議論があったのか、を整理することでした。他の先進国と同様、わが国でも医学研究は盛んに行われていますが、研究に伴うこうした論点が公的な課題として注目されるようになったのは、比較的最近のことです。医学研究のあり方をめぐって海外で長い議論が繰り広げられてきたように、日本でも過去の経験をもとに研究のあり方、あるべき姿を考えるための教材が必要ではないか。これが本書の企画の出発点でした。

第1部
本書を読むために必要になる、医学研究・臨床試験における「研究倫理」「被験者保護」の基本的な知識、および国内外の展開について概観を示します。

第2部(本体)
この本では、以下の15の事案を検討し、その経緯を整理するとともに、講義等での利用を意識して、論点整理や考察を加えています。執筆を担った著者の名前と共に以下に示します。

  • Case1 被験者の同意なき臨床試験の実施(金沢大学病院無断臨床試験事案)……山本圭一郎
  • Case2 プロトコルの規範性(愛知県がんセンター事案) ……船橋亜希子
  • Case3 「実験的」な手術(札幌ロボトミー事件) ……田代志門
  • Case4 First-in-Human医療機器試験と同意の有効性(補助人工心臓治験事案) ……松井健志
  • Case5 戦中の反人道的軍事医学研究(駐蒙軍冬季衛生研究) ……土屋貴志
  • Case6 精神疾患と被験者研究(ツツガムシ病感染実験事案) ……中澤栄輔
  • Case7 子どもを対象とする研究(名古屋市立乳児院・神戸医科大学事案) ……永水裕子
  • Case8 製薬企業の従業員を対象とした研究(社員へのキセナラミン投与事案) ……横野 恵
  • Case9 地域住民を対象とする研究(熊野町がん予防研究事案) ……須田英子
  • Case10 臨床現場で患者試料を採取する研究(慶應義塾大学病院事案) ……高島響子
  • Case11 解剖後の試料の取扱い(自治医大事件および監察医務院事件) ……佐藤雄一郎
  • Case12 新薬開発における製薬企業と研究者の責務(ソリブジン事案) ……一家綱邦
  • Case13 研究への企業の関与と利益相反(ディオバン事案) ……磯部 哲
  • Case14 臨床試験の支援スタッフと不正(千本病院・北里大学事案) ……井上悠輔
  • Case15 研究不正とオーサーシップの問題(STAP細胞事案・大量論文ねつ造事案) ……伊吹友秀

これらの事例に加えて、この部では以下のような補足のコーナーを設けています。PlusOneでは、Caseでは扱いきれなかった概念や状況(被災地研究、囚人研究)、日本での倫理審査の歴史について扱っています。

  • PlusOne1 研究と診療の境界を考える(「革新的治療」の許容条件) ……田代志門
  • PlusOne2 受刑者(囚人)を被験者とする研究 ……大北全俊
  • PlusOne3 災害研究に求められる倫理(被災者を守るための研究倫理とは) ……飯島祥彦
  • PlusOne4 日本における倫理審査委員会の誕生と展開 ……會澤久仁子

第3部
この部では、研究倫理の進展の歴史(国内外の出来事や規制など)を一覧できる年表と、国内で実際に起きた医学研究にまつわる事案(計66件)の要約を作成しました。 ……和泉澤千恵・一家綱邦・井上悠輔・小門 穂

この本に関する書評

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日本評論社