倫理コンサルテーションとは、医療やケアの現場において倫理的問題に直面した人たちを支援する活動です。アメリカにおいて始められたこの活動は、現在日本においてもその重要性が広く受け入れられつつあります。治療の不開始・中止を扱った厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」が、「複数の専門家からなる場を別途設置し,治療方針等についての検討及び助言を行うこと」を求めているのは、その一例であると言えます。こうしたなか、具体的にどのような手続きを踏めば倫理コンサルテーションを導入できるのか、また、一定期間実施したのちに、どのように評価を行い、改善に結びつければよいのか、悩んでいる人はいるでしょう。本書は、こうした疑問に答えることを目的に、執筆されました。

執筆のさいには、アメリカやドイツにおける先行する取り組みを参考にしながらも、日本における医療・ケアの現状や、執筆メンバーが実施してきた倫理コンサルテーション活動の経験を重視しました。例えば、アメリカやドイツでは、臨床倫理委員会と研究倫理委員会の役割分担が明確であり、通常前者が倫理コンサルテーションチームの母体となります。しかし本書では、臨床倫理委員会の設置が研究倫理委員会に比べて遅れている日本の現状を踏まえ、後者を母体とする可能性も否定していません。本書を通じて読者は、現在の日本において倫理コンサルテーションを導入し、運用・改善するための具体的な方法を学ぶことができます。さらに、巻末には、導入にあたり必要となる、運営規則や倫理コンサルテーション実施記録を収録しました。これらの文書は、わたしたちが所属する生命・医療倫理研究会HPから電子ファイルの形でダウンロードすることもできますので、ぜひご活用ください。

わたしたちは、本書を完成されたものと考えてはいません。第4章では倫理コンサルテーションの評価を取り上げましたが、半世紀にわたる歴史をもつアメリカでも、依然として確立された評価方法は存在しません。さらに、第6章では、在宅医療・ケア領域の倫理的問題への対応を支援するための院外倫理コンサルテーションを紹介しましたが、どのように導入し運用していくのかについては、実践も研究もまだ始まったばかりです。今後も、よりよい倫理コンサルテーションのあり方を模索しながら、改訂を重ねていく予定です。日本の倫理コンサルテーションとともに本書が成長できるよう、読後のご意見やご感想をお寄せいただければ幸いです。(研究会HP内には、本書に関するご意見・ご感想をお送りいただくための専用フォームも設置されています。)

堂囿俊彦(静岡大学)