本書は、著者が編集委員を務める医薬品情報誌『薬のチェック』に長年連載していた「みんなのやさしい生命倫理」であり、以下のような構成となっている。

 序 章 個人と社会のはざまで-どうして人を殺してはいけないの?
 第1章 死と生、愛と性-いのちが生まれる土壌
 第2章 出会いからカップル成立まで-何に惹かれるか
 第3章 婚姻-ひかれあう生命
 第4章 生まれる人間の尊厳とは-人工妊娠中絶と生命倫理
 第5章 生殖補助医療-生命倫理より技術が先行
 第6章 延命治療とその拒否-どこからが“助けるべき生命”か

 終末期医療、安楽死についての執筆は、著者が、予後の悪い疾患に侵され、自身で執筆ができなくなったため、刊行元編集部が整理し、3回忌となった2021年命日に刊行された。本書は、生老病死において、「生」の記述が多くを占めている。連載中、読者は、「いつになったら“老”“病”“死”の話題になるのですか」と質問したところ、著者は「まだ当分は生を扱います。生をじっくりと見つめる事で、自ずと老病死も見えてくるのではないでしょうか」と答えたそうである。

 著者は、『科学的根拠に基づく医療(EBM)』と『物語と対話の医療(NBM)』の論点を見逃さず、穏やかに、また厳しい視点から「生老病死」を捉えた医学者・生命倫理学者であった。2006年、著書「みんなのやさしい生命倫理、“インフォームド・コンセント”(NPO医薬ビジランシセンター刊行)」と共に、遺稿となった本書をご一読いただき、在りし日の著者を偲び、愛と希望に満ちた教育と研究に役立てていただけると幸甚である。

文責 九州大学大学院医学研究院 丸山マサ美