本書は、アドバンス・ケア・プランニング(Advance Care Planning:以下ACP)の基本的な知識から具体的な取り組み方法、様々な医療・ケア分野におけるACPの特徴を網羅し、ACPの「最初の一歩」を踏み出す時に参考になるような内容を心がけました。
 本書の読みどころは、ACPについて実際に患者や家族と話す時に役立つ方法や使えるツールを載せることで、患者や家族の気持ちを見えるようにしていくACPの実践方法ガイドとしての機能をもたせたところです。

 第1章では、前半はACPの基礎知識として、よく混同されがちなACPとリビングウィルなどの事前指示との関係や、ACPに重要なエンド・オブ・ライフケアの考え方、最近着目されているフレイルをどうACPに活かすかなどについて解説し、後半では、ACPを具体的に進めるための手順としてACPの5W1H(ACPをいつ・誰が・どこで・何を・どんなふうに行うのか)にわけて解説しています。5W1Hでは、特にACPのなかで難しいとされている「ACPを行うタイミング」をどうやって把握するかについて、様々な側面から解説し、実践する際に参考になるように心がけました。

 第2章では、緩和ケアや脳血管障害、心不全、神経難病など、様々な医療・ケア領域におけるACPの特徴と意思決定支援のポイントについて、その分野の実践者である方々に事例をつけて具体的に解説していただきました。今回は、各領域の疾患がどんなタイミングで意思決定が必要になるのかについて、経過図をつけて解説してありますので、各領域のACPのタイミングを把握するのに役立つと思います。

 第3章では、実際に患者のACPを「見える化」する試みとして、様々なツールを入れました。患者のACPを「見える化」するとは、ツールを用いて紙面上に患者の人生を再現し、意向や意思決定のタイミングを把握できるようにする試みです。「人生曲線シート」では、患者の人生や疾患の経過曲線を予測することで、ACPのタイミングの手がかりが少しでもつかめるようにしました。「意思決定支援シート」では、患者・家族の抱える意思決定上の問題を分析し、支援方法を見いだせるようにしてあります。また、患者や家族が自分の気持ちを考えるためのツールとして、「私の意思決定シート」と、「私の人生ノート」も入れました。「私の意思決定シート」は、今、直面している意思決定の問題に対して、患者がその問題や問題に対する自分の希望について考えるためのツールで、「私の人生ノート」は、自分の好みや暮らし方、医療や介護、終末期の希望を考え、エンディングノートとしての機能も兼ね備えているものです。

 第4章では、ACPにおけるコミュニケーションのポイントについて解説しています。ACPを実践する際に一番困るのが、「ACPをどう切り出すか」、「意向を表明してもらうにはどうしたらいいのか」など、コミュニケーションにまつわることです。そのため、ACPにおけるコミュニケーションの基本姿勢、コミュニケーションスキル、場面ごとの具体的なポイントと会話例について解説しました。

 本書は、とにかく「ACPの主人公である患者の気持ちが見えるようにしたい」、「現場の医療者や介護者が具体的に使えるものを入れたい」という思いで作りました。患者・家族と現場の皆さんに少しでも役立てることができたら幸甚です。