- 期間:2024年11月〜2027年8月31日
- 部会長:宮岡等(北里大学)
- 幹事:齊尾武郎(フジ虎ノ門整形外科病院)、栗原千絵子(生命倫理政策研究会、臨床評価刊行会)
- 部会員:不定(オンラインセミナーや当学会学術総会でのシンポジウム・ワークショップの開催が主な活動内容であり、当学会員を主に、その他、当事者・多職種の参画を推進し、一般にも参加・発表・討議の機会を提供するため、部会員は特に定めない)
活動目的
活動目的:1950年代に始まる精神薬理学の進歩は、多くの精神疾患に対し向精神薬の臨床応用の道を拓いた。しかし、その一方で向精神薬の十分な科学的根拠を欠く適応外処方や、多剤投与・大量投与、過少投与を招いた。それに伴い、向精神薬の副作用・有害事象・無効により患者の生命あるいは社会生活に支障が生じるケースが稀ならず発生し、すでに長年にわたり社会問題と化している。
こうした向精神薬の適正使用上の課題は、まず、医薬品の適正使用・医薬品経済の文脈より、医師・薬剤師等の職能団体・学術団体のプロフェッショナルオートノミー(診療ガイドライン作成・普及を含む),、医薬品規制当局の医薬品政策等(薬機法、薬物5法等の改正や行政指導を含む)にて改善すべき問題である。しかし、向精神薬の適正使用上の課題は医療倫理上の課題も有している。たとえば,患者がいわゆる「病識」を欠く場合に向精神薬による非自発的治療を実施すること(薬理学的抑制など)は、向精神薬の投与が患者の生命や社会生活の維持を企図して行われるという点では確かに正当化が可能であるものの、患者の自由意志を否定し治療を強制している。あるいは高齢者では、精神作用(刺激・抑制)を有する治療薬が内科・整形外科等のいわゆる身体科で多用されており、重症の精神疾患がこれらの治療薬による薬剤性精神疾患として生じていることが稀でない。これをしばしば原発性精神疾患と見做し、向精神薬による非自発的治療が実施されているが、これは医原性疾患を誤診した上に患者本人の意に反して、あるいは本人の意を確認せず向精神薬療法を行っており、シェアド・デシジョン・メーキングが蔑ろにされ、医薬品の適正使用や良好な医師患者関係に重大な影を投げかけている。これは精神疾患における患者中心主義や公平・公正な社会に開かれた医療が要請されている今日、医学医療情報の非対称性やインフォームド・コンセントにおいて、解決すべき大きな課題を提示している。
このように向精神薬の適正使用には、臨床精神薬理学的な問題に加え、医療倫理上の複雑な多岐にわたる課題がある。本部会では、こうした課題を科学知識の公衆的理解の観点から、向精神薬の適正使用につき広く啓発し、併せてその倫理的・哲学的・社会的問題等を巡り学際的に研究するための基軸として生命倫理を捉え、その研究・教育・議論を喚起する。
2024年度活動計画
- 本年度中に2~3回(可能であればそれ以上)、向精神薬療法に関するオンライン研究会/研修会を実施する。
- 向精神薬の適正使用概論
- 向精神薬療法の行われる精神疾患に関する概論
- 薬事規制・精神保健福祉法制
- 精神医療に特化した医療倫理・研究倫理概論
- 本部会の話題提供は当初は部会長・幹事が行うが、参加者に話題提供者となることを積極的に働きかける。
- 次年度以降、順次、各種精神疾患診療ガイドラインの批判的吟味(可能であれば、小グループ学習)、当事者主義・リカバリー、精神医学の科学性、精神科治療薬の今日的話題(高額な認知症薬の登場、うつ病等に対する実験段階の幻覚薬療法など)、疾病喧・社会の精神医学化・心理学化、事例検討(ただし、いくつかのケースを組み合わせたモデルケースを用いる)、医薬品不足問題その他について、その倫理的課題を探る。精神医学関連の諸学会の動向に鑑み、場合によっては、社会問題としての精神医療に関するサブコミッティーを設けることも検討している。
- 研究会の内容がある程度まとまったところで、折をみて医学論文や書籍などの形にまとめる予定である。
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