活動総括
今年度の目標は、「部員の倫理的思考過程を、生命倫理の枠組みにそって言葉や文字にして表現したり、伝えたりする力を培うこと」とし、できるだけ部会や部員以外の方々に向けて、発表や論文等で発信する機会を増やしていくことに努めました。部会の勉強内容についても、当学会はじめ、学会発表の方法や、介護現場に認める倫理的課題を生命倫理学という学問の枠組みにおいて発表するには、どのような手順で行うのが適切であるかなど、他者への伝達の方法について学問的且つ基礎的な事柄を中心に学ぶ機会を設けました。
結果として、10月の公開講座においては、初めての発表という部員もおりましたが、発表する瞬間を通して、自身の考えを客観的に見つめ直すことができたようでした。発表するだけでなく、自身の発表に関する質問に対する応答の内容も、徐々にではありますが、多くの部員が倫理的思考で展開できるようになってきているように思われます。コロナ禍以後、介護現場は人手不足のため、部会に参加することがなかなか難しい状況もあり、今年度は、多くの部員が、かなり無理しながら、参加への努力をして頂いたことに、心より感謝しております。オンラインでなかったら、続けられなかったようにも思われます。
ただ、実行ができなかった活動があります。それは、当学会年次大会のワークショップで発表できなかったことです。3名で組んだのですが、研究承認番号をもたない研究が入っており、演題申し込みの直前で判明したため、今年度は諦めた次第です。次年度に向けて、準備を進めておるところです。しかし、この経験を通して、倫理審査委員会に研究を提出することの大切さを学びました。勤務先に審査期間が無い場合や、申請者が多くて中々承認まで時間のかかる場合もあり、介護福祉領域の研究の進め方の難しさも、部員は経験できました。今年度実現できなかった活動目標につきましては、次年度に活かしたく考えております。
一年間の活動記録
第1回部会:5月31日(水)午後7時半~9時 オンライン 10名参加
今年度の活動計画と実施内容について話し合う。
第4回実践講義(演習講義を改名):中村が担当
「介護の倫理の研究に必要な知識と技術」
講義の後、全体ディスカッション
第2回部会:7月26日(水)午後7時半~9時 オンライン 12名参加
前回の実践講義の復習及び今年度年次大会ワークショップについて話し合う。
第Ⅳ回教育講義:竹下先生ご担当
「学会発表に必要な研究倫理審査委員会の承認番号について」
講義後、全体で質疑応答も含め、全体ディスカッション
第3回部会:9月27日(水)午後7時半~9時、オンライン、参加者 11名
今年度年次大会ワークショップへの参加ができなかったことについて報告、
発表用に準備した研究については、10月の公開講座、及び次年度の年次大会に向けて検討する旨伝え、部会で承認をもらう。公開講座についても話し合い、全員参加とする。
第5回実践講義:中村担当
「介護現場で利用者の自己決定における倫理的課題―利用者の権利優先の可能性の限界を考える」
講義後、質疑応答を経て、全体ディスカッション
公開講座の予行の会: 10月24日(火)午後7時~8時 オンライン 8名参加
実際の流れにそって、予行演習を行い、竹下先生と中村がコメント、発表者間で意見交換を行い、それぞれの内容を確認する。
第4回部会:10月31日(火)午後6時~7時半、公開講座を実施。オンライン
参加者18名(7名が部外者)、発表者5名。とても有意義な会でした。部外者として参加された施設長さんからは、丁寧な感想のメールがよせられ、介護現場で倫理的実践を行う事の大切さがわかったということでした。発表者自身も、とても満足の様子で、研究過程で考えたことを他者に伝えることの大切さを実感したようでした。部員全員の成長を感じた次第です。
第5回部会:令和6年1月31日(水)午後7時半~9時オンライン 参加者10名
公開講座に全過程参加できなかった部員に、振り返りの報告を行うと同時に、発表した部員の感想や今後について話してもらった。生き生きした表情とやる気が感じられた。
その後、これまでの復習を実施し、改めて、全員で「介護現場における利用者の自己決定の在り方」について話し合った。
第6回部会: 3月25日(月)午後7時~9時、第4回研究報告会を実施予定。
2月末日までに、各部員から、発表のテーマと発表のタイプ(研究発表、関心のある内容の紹介など)をメールで頂いているので、詳細は3月20日頃まで配信の予定。
今回の研究報告会の様子をビデオで録画し、各部員に記念に配信の予定。次年度は、新たな部会の申請を行う必要があることを伝え、部会は、それまで自主的運営に切り替えて行うことで承認を得る。
論文などの発表
- 第31回日本介護福祉学会総会にて口頭発表:令和5年9月10日、オンライン実施
「コロナ禍における訪問介護現場の現状を振り返る」、荒川泰士・中村裕子 - 滋賀県野洲慈恵会研修会(2023年度研修会)講演:中村裕子
「介護の倫理を生命(規範)倫理の視点から研修する」、令和5年10月30日 - 長野県介護福祉士会主催「生命倫理を研修する会」:令和6年1月24日(月)
講師:中村裕子 - 第29回日本臨床倫理学会:令和6年3月17日、シンポジウム発表、中村裕子
「専門性の異なる看護職と介護職が協働する介護現場で臨床倫理が担う役割」 - 特集論文「介護福祉学」vol. 30(2), 2024。日本介護福祉学会。
中村裕子:「コロナ禍の介護現場おいて生命倫理(規範倫理)が果たす役割-感染症施策の実施下で要介護者のQOLと尊厳を保持する知識と技術」