臨床現場で医療・ケアを進めていく際に起きる「どうすればよいか」という問いは、倫理的な問いであり、臨床倫理がその問いに対応します。医療・ケア従事者と人文・社会系研究者(臨床倫理プロジェクト)とが共同で、こうした問いにどのように取り組むかを30年かけて開発してきました。こうしてできた本書を「臨床倫理事例検討法の決定版」としてここにご紹介します。

 本書が提唱する事例検討法は、本人の人生にとっての最善を目指し、その意思決定プロセスを支援し,合意への道を探るものです。チーム・カンファレンスに最適と言えましょう。
 次に目次をご覧に入れます。著者の多くは日本生命倫理学会の会員です。

I 概説編(臨床倫理プロジェクトによるセミナーの基本となる部分です)
 1.臨床倫理の基礎(会田薫子)
 2.臨床倫理事例検討の進め方(清水哲郎)

II 実践編(様々なタイプの課題に、医療・ケア従事者が取り組みました)
 0.モデル事例を使った検討の実際例(清水哲郎)
 1.医師が推奨できない治療を患者・家族が望むとき(進藤喜予・清水千佳子・吉田 良)
 2.患者・家族が生存期間の延長を望まないとき・拒否するとき(安部 樹・石橋由孝・山﨑宏人・笹月桃子)
 3.意向/価値観等が対立するとき(畠山 元・高屋敷麻理子・小藤幹恵)
 4.家族への対応に苦慮するとき(会田薫子・荒木 尚)
 5.介護問題が意思決定を困難にするとき(二井谷友公・岩城隆二)
 6.本人が言語化した意思が真意とは異なると思われるとき(丸木雄一)
 7.患者が意思決定能力をもたないとき(西川満則)
 8.家族がいないとき(石井 健)

III アドバンスト編(概説編を踏まえた上で、臨床倫理の各論を展開しています)
 1.本人の意思を尊重するということ(日笠晴香)
 2.臨床におけるケアの倫理(早川正祐)
 3.臨床の倫理原則における《尊厳》の位置(清水哲郎)
 4.厚生労働省「人生の最終段階ガイドライン」と《情報共有―合意モデル》(清水哲郎)
 5.高齢者のためのACP(会田薫子)
 6.患者の意向を尊重したACPの進め方(江口惠子)
 7.MCDの知見を用いる事例検討法(田代志門)
 8.病院組織における倫理サポート体制(田代志門)
 9.臨床倫理の検討を深めるためのファシリテーション(田村里子)
 10.臨床倫理の文化を現場に定着させるために(霜田 求)

対談 臨床倫理の過去・現在・未来(石垣靖子・清水哲郎)

出版社による本書のページ http://www.utp.or.jp/book/b593476.html

以上

清水 哲郎(岩手保健医療大学)