本書は、ACPに「START(Support, Timing, Action, Relation, Talking)」と「エフェクチュエーション」という新しい視点を取り入れたACPの実践ガイドです。
 本書の読みどころは、ACPをSTARTという視点でマッピングし、ACPをいつ・誰が・どこで・何を・どんなふうに行うのか、さまざまな側面から解説しています。
 また、今回は新しいアプローチを取り入れ、経営学で使われる意思決定理論「エフェクチュエーション」を用いて、意思決定支援で問題や困難にぶつかったときに参考になる考え方や問題解決方法を解説しています。エフェクチュエーションは、「手中の鳥の原則」、「許容可能な損失の原則」、「クレージーキルトの原則」、「レモネードの原則」、「飛行機のパイロットの原則」というユニークなネーミングの5つの原則を用いる思考過程です。従来、医療の思考過程は、将来予測を基盤として、情報収集・分析、診断、治療・ケア計画の立案、治療・ケアの実施という流れを辿ってきました。この思考過程は将来予測が可能であれば有効ですが、ACPのように、そのときになってみないとわからないような将来予測が難しい状況下ではうまくいかないことも多いものです。こうした予測困難な状況における意思決定支援に、エフェクチュエーションは新たな視点を与え、マインドセットをかえることで行動のハードルを下げてくれます。このエフェクチュエーション×医療のコラボレーションは、本書が日本初となりますので、今までにない視点で問題解決の突破口を見出すヒントになると思います。問題解決に使えるワークシートも入っておりますので、ぜひご活用いただければ幸甚です。

出版社による本書紹介ページもご参照ください
https://www.herusu-shuppan.co.jp/044-2/

【本書の構成】
第1章:アドバンス・ケア・プランニングの基礎知識
 • アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは
第2章:家族とACP
 • 家族におけるACPの現状と課題
 • 家族に対するACP支援とは
第3章:STARTを使った具体的なACPの進め方
 • Support:ACPの意思決定をどう支援するか
 • Timing:ACPの開始・振り返り・変更のタイミングはいつか
 • Action:ACPをどう進めるか
 • Relation:誰が誰とACPを行うのか
 • Talking:ACPをどう話すか、ACPを進めるためのコミュニケーション
 • STARTマップ:ACP支援の現在位置を確認する
第4章:代表的な疾患・状態におけるACPの実践
 • がんのACP
 • 心不全のACP
 • 呼吸器疾患のACP
 • 慢性腎臓病のACP
 • 脳血管障害のACP
 • 神経難病のACP
 • 精神疾患のACP
 • 認知症のACP
 • 虚弱など要介護状態に向かう時期のACP
第5章:ACP実践事例
 • 13事例から考えるACP実践
第6章:ACPを実践するうえでの新しい考え方 -エフェクチュエーション-
 • エフェクチュエーションとACP
 • 「手中の鳥の原則」を使って手段を見直そう
 • 「許容可能な損失の原則」を使って失敗してもいい範囲を最初に決めよう
 • 「クレイジーキルトの原則」を使って新たな協力者を見つけよう
 • 「レモネードの原則」を使って問題をチャンスに変えよう
 • 「飛行機の中のパイロットの原則」を使ってコントロールできることに集中しよう
 • さまざまな立場から考えるエフェクチュエーション的ACP支援
付録
 • STARTマップ
 • エフェクチュエーションシート

角田 ますみ(杏林大学)