本書は、2019年に出版した書籍の改訂版です。幸いなことに、多くの方に初版を手に取
っていただき、第2版を出版することになりました。初版から大きく変更したのは以下の3
点です。

 第一に、初版出版以降、臨床倫理や倫理コンサルテーションに関する社会的な変化を反
映しました。実際、初版が出版されて以降、臨床倫理や倫理コンサルテーションをめぐる
取り組みは活発になっており、倫理に関する取り組みの必要性を指摘するガイドラインの
公表、倫理コンサルテーションや臨床倫理に関する教材の出版、学会による倫理コンサル
タント育成のための教育プログラムの導入等、さまざまな動きがありました。例えば、第
7章の参考資料に掲載した書籍数は、初版では17冊でしたが、改訂版では28冊に増えてい
ます。

 第二に、院外倫理コンサルテーションに関する説明を大幅に増やしました。初版でも院
外倫理コンサルテーションを取り上げましたが、日本における取り組みの少なさもあり、
詳細な記述をすることはできませんでした。そのため私たちは,初版出版直後から、在宅
医療・ケアにおける倫理的課題の調査を行うとともに、自ら院外倫理コンサルテーション
を実践してきました。今回全面的に改訂された第6章では、院外でコンサルテーションにお
ける個人情報の扱いや、オンラインで行う場合の注意点も含め、実際に院外倫理コンサル
テーションを実施する際に必要となる事項が網羅されています。

 第三に、仮想倫理コンサルテーションを巻末付録として収録しました。倫理コンサルテ
ーションを実際に経験したことがない人は、ひょっとしたら、「倫理コンサルタントは正
しい答えを出さなければならない」「相談したら自分の対応について批判される」と思い
込み、倫理コンサルテーションを導入・利用することをためらっているのかもしれません
。仮想倫理コンサルテーションを読むことで、こうした誤解が少しでも解けることを願っ
ています。仮想事例を用いた倫理コンサルテーション依頼書や結果通知書のサンプルも付
いていますので、併せて参考にしてください。

 この他にも、本書の姉妹書である『倫理コンサルテーションケースブック』を読むこと
で理解が深まる場合には脚注を付けるなど、全体を詳細に見直し、随所に変更を加えまし
た。ぜひ実際に手に取って確かめていただければ幸いです。また、初版と同じく、本書で
引用した文献のうちインターネット上で入手できるものは、生命・医療倫理研究会のサイ
トにリンクページを作成しています。このページからは、付録として本書に収録した倫理
コンサルテーションチーム運営規定等の各種規程や依頼書等を、ワードファイルおよび
PDFファイルでダウンロードすることもできます。ぜひご活用ください。

目次
1章 倫理コンサルテーションの基礎
2章 倫理コンサルテーションの設置
3章 倫理コンサルテーションの進め方
4章 倫理コンサルテーションの評価
5章 倫理コンサルテーションと関係した活動
6章 病院外の活動
7章 参考資料
付録A(各種規程、依頼書等)
付録B(仮想倫理コンサルテーション)
詳細な目次は出版社のページでご覧いただけます。

堂囿俊彦(静岡大学)