本書は、障害のある人に妊娠、出生前検査、親や子どもについて尋ねたインタビュー調査にもとづいています。私がお話を伺った方々が、自分の身体にかかわる経験をどのように語ったか、それらの経験の幼少期の記憶はどのようなものか、出生前検査の存在を知った時にイメージした「胎児」とはどのようなものかなどを検討することを通して、出生前検査の文脈で診断される「障害」を〈名としての障害〉、生きている人の経験が織り込まれた「障害」を〈生きられた障害〉と名づけ、それぞれが用いられる文脈ごとに複数のはたらきをもつことを明らかにしています。
1970年代に自治体が出生前検査(羊水検査)を公費で実施しようとしたことに対して「青い芝の会」神奈川県支部が行なった「胎児チェック反対運動」も扱っています。
章と章のあいだに、お話を伺った方々のうち8名の語りを一篇ずつ掲載し、彼ら彼女らがどのように語っているのかを直に感じ取っていただけることも本書の魅力だと思います。
目次は以下です。
序 章 この本の内容と方法
第1章 どんな人たちに話を聞いたのか
第2章 出生前検査について、障害のある人から話を聞くこと
第3章 自分の障害名を説明すること
第4章 「障害」を認識したとき
第5章 胎児をめぐるふたつの「障害」
第6章 「障害」という言葉
第7章 「中絶」や「検査」を勧められた経験
補 章 1970年代、青い芝の会による要求
第8章 2010年代の声、過去からの声
あとがき
文献一覧
付属資料1~4
索 引
詳しい内容は http://www.rakuhoku-pub.jp/book/27330.html もご覧ください。
二階堂 祐子(国立民族学博物館)