本書は、看護基礎教育における「看護倫理」の教科書ではありますが、「看護倫理」を学びたい、「看護倫理」を教えるすべての人に向けた書籍です。本書では、意識的な努力による「問う」ということにこだわり、豊富な40事例を通して「問う」訓練ができるようにしました。また看護実践の倫理を考えるためには、看護の「科学性」と「倫理性」の双方が不可欠であり、本書では事例を通してそのことが学べるように意図しています。
本書の特徴は以下です
・総論編と事例編にわかれており、看護倫理で学ぶべき重要なトピックスを網羅
・事例編は、従来の領域別ではなく、倫理という観点で論点別に問題群を整理
・臨床の40事例をもとに倫理を考える構成
・総論編と事例編は相互に関連しあい、関連する箇所を随所に提示し、具体的な事例を通して学ぶことができる設計
・事例は、「倫理的問い」「行動すべき判断の根拠」「具体的なアプローチ」という一連のわかりやすい流れで、看護職の思考と行動、態度について考えることができる
・章末にはグループ演習用事例を複数提示
【編著】
鶴若麻理(聖路加国際大学)
【執筆】
内山孝子(神戸市看護大学)
勝山貴美子(横浜市立大学)
白鳥孝子(和洋女子大学)
髙橋花子(同志社女子大学)
竹之内沙弥香(京都大学)
寺岡征太郎(帝京大学)
長尾式子(北里大学)
永野光子(順天堂大学)
村井孝子(純真学園大学)
目次
第I部 総論編:看護実践で倫理を考える基礎
序章 看護倫理とは何を学ぶことなのか
第1章 なぜ看護実践において倫理を考えるのか
1 看護倫理とは何か
2 看護師の倫理的・法的責任と倫理的行動の基盤になる概念
3 看護職とプロフェッショナリズム
第2章 看護倫理を考えるための基盤
1 倫理学の基礎
2 生命倫理とは何か
3 倫理原則と看護
4 基本的人権の尊重と患者の権利
5 インフォームドコンセント
6 社会的に脆弱な人々と看護
第3章 倫理的課題をとらえる思考とアプローチ
1 看護師が直面する倫理的課題
2 倫理的課題をとらえるための思考
3 言語化と対話
4 分析ツールの活用と課題
5 意思決定に関するアプローチ
第4章 医学・社会の発展と倫理
1 性や生殖に関する倫理
2 遺伝/ゲノム医療と倫理
3 移植医療と倫理
4 エンドオブライフケアと倫理
5 研究の倫理
6 プラネタリーヘルス
第II部 事例編:倫理的看護実践を考える―態度・思考・行動
事例編の構成と活用の方法
第5章 患者と看護師の関係性
1 人に敬意を払う・人格の尊重
事例1 交通事故により意識障害のある患者のおむつ交換
事例2 「違う」と言ったきり動かないパーキンソン病の患者
事例3 着せ替え人形を投げつける子ども
2 プライバシーを守る
事例4 高齢者が裸で一列に並ぶ入浴介助
事例5 カーテンで仕切られたICU室内で交わされる医師らの会話
3 秘密を守る/個人情報の保護
事例6 芸能人の○○が入院したらしいと電子カルテを閲覧
事例7 「すぐ行きます」と患者に約束したものの
事例8 患者から秘密を打ち明けられた看護学生
4 誠実性
事例9 18歳の青年,両親は深刻な診断を知らせないでほしいと言う
事例10 遷延性意識障害の患者の足爪を傷つけたがインシデント報告をしない
5 公平性
事例11 あまりかかわりたくない患者
5章グループ演習用事例1
5章グループ演習用事例2
第6章 知る権利を守る
1 意思決定能力のある成人の場合
事例1 医師の説明を理解しないまま同意書にサイン
事例2 なぜか看護計画に沿った清拭をいやがる患者
2 意思決定能力や身体能力が低下しつつある場合
事例3 どうして酸素マスクをつけているのか?
事例4 車椅子でヘルパーに付き添われた患者への検査結果説明
3 精神疾患を有する成人の場合
事例5 主治医はADHDの自分には就職は無理と決めつけている
4 小児の場合
事例6 緊急手術が必要な7歳男児へのインフォームドアセント
事例7 両親の意向で病名を告知されないまま化学療法を受ける中学3年生
6章グループ演習用事例
第7章 意思決定における倫理
1 意思決定能力のある場合
事例1 生命の短縮につながっても胃ろうを拒否する患者
事例2 人生の最終段階での療養場所に関する本人と家族の意向の違い
事例3 「わたしは産みたいって言っているじゃない!」
2 意思決定能力のない場合
事例4 本人が残した事前指示と家族の意向が違う
事例5 夫が登山中に滑落,治療の決断を迫られる妻
事例6 18トリソミーの重症新生児,父親は治療を望まないというが
7章グループ演習用事例
第8章 身体拘束:人権保護と安全確保のジレンマ
1 急性期病院での場合
事例1 認知症のある患者には手術後に身体拘束しないと危険?
2 精神病床での場合
事例2 希死念慮のある患者の身体拘束を外してほしいと訴える家族
3 小児患者へ治療・処置を行う場合
事例3 採血時の身体抑制を拒否する子ども
8章グループ演習用事例
第9章 患者への害を防ぎ生命や安全を守る
1 高齢者虐待
事例1 目の周りにあざのある高齢者,本人と長男は転んだと言うが
事例2 老老介護,夫は「ちゃんと看ている」との主張
2 セルフ・ネグレクト疑い
事例3 近隣住民から「ゴミが溜まって火事になっても困る」との通報
3 児童虐待
事例4 家族による加害か? ソファーから転落し頭蓋骨骨折した乳児
事例5 定期受診に現れず喘息発作で夜間救急外来受診が増える7歳児
9章グループ演習用事例
第10章 看護管理と倫理の交点
1 医療資源の配分
事例1 未知の感染症によるパンデミックで人工呼吸器が足りない
事例2 夜勤帯,トイレ介助のさなかにナースコールが鳴り響く
2 組織のルールに従う
事例3 病院の決まりごととしてすべての患者に渡される入院パッケージ
3 労働者としての権利
事例4 患者から暴力を受けたがリーダー看護師は意に介さない
事例5 患者の前で叱られる新人看護師
10章グループ演習用事例
第11章 多職種との連携・協働
1 職種間で異なる価値観
事例1 余命6カ月の患者の治療をめぐる医師と看護師の意見の相違
事例2 認知症高齢者の直腸がんの手術とストーマ造設をめぐる合意形成
2 看護職の専門性と自律性
事例3 訪問看護指示書には書かれてないから…という新人訪問看護師
11章グループ演習用事例
出版社による紹介ホームページ:https://www.ishiyaku.co.jp/search/details?bookcode=233640
情報提供: 鶴若 麻理(聖路加国際大学)