受賞者の報告

大会全体

 2020618日にInternational Association of BioethicsIAB)最大のサブネットワークであるInternational Network on Feminist Approaches to Bioethics (FAB)のプレ・カンファレンスが開催され、翌19日から21日には第15World Congress of Bioethics (WCB)が開催された。本来の予定通りであれば、会場は米国ペンシルバニア州フィラデアルフィアに位置するペンシルバニア大学の予定であったが、Covid-19 による世界規模のパンデミックの影響を受け、ウェブサイト上でのバーチャル・カンファレンスとなった。なお筆者は、パンデミック前の登録との関係からWCBへの参加であったため、以下はWCBのみについて報告する。

 大会テーマは、「Autonomy and Solidarity : Bridging the Tensions」であった。WCB初日、ペンシルバニア大学学長で、オバマ政権時のPresidential Commission for the Study of Bioethical Issuesの委員長であったエイミー・ガットマン氏から、生命倫理学における公衆衛生の重要性が述べられた。具体的には、Covid-19のような感染力の高い病気においてはグローバル・ヘルスの問題はローカル・ヘルスの問題であることや、健康の不平等は全ての人々に影響を与える問題であること、公衆衛生と革新的研究への積極的投資の必要性の指摘があった。加えて、マスク着用やワクチン接種に反対する人々も多い米国においては特に、生命倫理が重要視してきた個人の自律尊重だけでは公衆衛生の問題を解決することは困難であり、自律(Autonomy)と連帯(Solidarity)の調和、民主主義的熟慮(Democratic Deliberation)と集団的行動が必要である、とのことであった。

 その他、世界保健機関(WHO)事務局長のテドロス・アダノム・ゲブレイエスス氏のビデオ・メッセージや、202210月に改定予定の世界医師会の医の国際倫理綱領(案)についてのセッションなどもあったが、全体としてパンデミック下におけるグローバル・ヘルスや公衆衛生の議論が大きなトピックの一つであった。

バーチャルカンファレンス

 今回、母校での開催とういことでお世話になった先生方との再会を期待していたが、残念なことに59日に大会形式をバーチャル・カンファレンスに変更するとの知らせがあった。おそらく時間も経験もそれほど多く無いと思われる中で、世界規模の学会のウェブ開催を準備されたスタッフの苦労を思うと頭の下がる思いである。

 筆者はWCBには初参加で今回ポスター発表での参加であったが、他の国際学会における現地参加の経験と比べると、バーチャル・カンファレンスとリアルな現地開催とではいくらか異なる点があったので共有したい。

 世界各国から参加者がいるため時差を考慮して、ライブ配信は一日45時間程度であった。日によって開始時間や終了時間は異なったが、おおよそ米国時間(EST)午前9時頃開始され現地時間の午後1時か午後2時頃にはライブ配信は終了した。内容はレコーディングされ90日間ウェブサイト上で視聴でき、期間中は何度でもアクセスが可能である。そのため時差ぼけとの戦いもなく、発表者に直接質問したり交流を図ったりする必要がなければ、深夜まで起きている必要もなかった。

 オーラル発表とポスター発表に関しては、両者ともウェブサイト上に録音音声と共にスライドを掲載するという形式であった。オーラル発表の場合はスライド複数枚と音声、ポスター発表はスライド1枚と音声の掲載であった。各発表者のページには、何人の人がスライドを見てくれたか表示があったり、質疑応答も各ページ上に書き込む形式であった。そのため発表可能な情報量には差はあるが、発表形式による両者の差異はそれほど大きくない印象を受けた。また現地参加時にはよくあることだが、興味のあるセッション開催時間が重なって、どれか一つを選ばなくてはならないといったこともない。さらに、バーチャル・カンファレンスに変更されたことで参加費も安く再設定され、現地に赴く必要もないため、参加費を抑えながら国際会議に参加することができることは大きな利点である。反面、世界各国からの参加者との交流の機会が減少することは残念な点と言えるだろう。

次回開催予定

次回第16WCBは、2022年スイスのバーゼル大学(University of Basel)もしくはバーチャルにて開催予定である。

謝辞

この度の日本生命倫理学会のご支援に心から感謝申し上げる。

楠瀬まゆみ(理化学研究所)

受賞者の決定について

国際交流委員会による厳正な選考と理事会の承認を経て、楠瀬まゆみ氏(理化学研究所)がIAB 第 15 回 World Congress of Bioethics and/or FAB World Congress 参加助成を受賞者に選ばれました。しかし、IAB 第 15 回 World Congress of Bioethics and/or FAB World Congress はコロナウィルス感染症の拡大を受け、in personでの大会は実施されずvirtualなしかたでの開催となりました。受賞者には必要経費を給することになりました。

【参考資料】募集要項

1. 目的

日本生命倫理学会(JAB)は、学会員の国際学会発表を奨励し、国際交流の活性化をは かるため、生命倫理に特化した国際学会で発表を行うことが決定した学会員に助成金を支給します。この目的 のもと、今回は 2020 年 6 月に米国ペンシルバニア州フィラデルフィアで開催される International Association for Bioethics(IAB)による the 15th World Congress of Bioethics あるいは International Network on Feminist Approaches to Bioethics(FAB)による FAB World Congress において発 表を行う予定の JAB 会員を対象にして助成金を支給します。

2. 対象となる国際学会とその情報

  • IAB 第15回 World Congress of Bioethics あるいは 2020年度 FAB World Congress Conference
  • 開催期間:2020年6月17日から21日
  • 開催場所:アメリカ合衆国ペンシルバニア州フィラデルフィア
  • IAB 第15回 World Congress of Bioethics 演題募集に関する詳細は大会ウェブサイト(https://iab2020.org/program-prizes/#WCB)を参照のこと。
  • FAB 2020年度 World Congress Conference 演題募集に関する詳細は(https://iab2020.org/program-prizes/#FAB)を参照してください。

3. 対象者

  • IAB 第15回 World Congress of Bioethics あるいは2020年度 FAB World Congress に演題を申し込み、Proposalが受理されたJAB会員1名。

4. 応募資格

(1) JAB会員なら誰でもご応募できます。ただし、若手育成という観点から、選出の過程において大学院博 士課程在籍者や博士号取得後5年以内(いずれも2020年4月1日時点)の会員に優先度を与える場合があります。
(2)IAB第15回 World Congress of Bioethics あるいは2020年度 FAB World Congress Conference に演題を申し込み、Proposalが受理されたJAB会員。
(3)科研費等によりすでに旅費を確保できている会員の応募はご遠慮ください。

5. 応募書類

(1) 申請書(このページの下部よりダウンロードできます)。なお、申請書内の指定の箇所に、IABあるいはFABに受理されたProposal(報告)の内容ないしアブストラクト(英語の場合500 words以内、日本語の場合1000字以内)を記入してください。
(2) 2020年4月1日時点で、博士号取得後5年以内であることを証明できる書類等。

6. 助成金の支給額

申請書の6の予算額も参照して、30万円を上限として支給します。IAB第15回 World Congress of Bioethics and/or 2020年度 FAB World Congress Conference に関わる費用に用いることができます。これらの費用には、たとえば ① 航空費及び自宅より空港までの往復交通費、② 参加登録料、③ 大会開催地での宿泊費や移動費、④ 海外渡航保険加入費、⑤ その他大会参加に関連することが合理的に認められるような経費を含みます。なお、助成金は、上記の World Congress終了後、提出書類が確認された後に、指定の銀行口座等への振り込み等で支給します。

7. 受給者の提出書類

助成金受給は、当該の World Congress終了後1ヶ月以内に以下の書類等を国際交流委員会(international[at]ja-bioethics.jp)に提出してください。なお、これらの書類等は電子化されて、JAB事務局に電子メールで送付されるのが望ましいです。

(1) 航空券領収書
(2) 参加登録証明書(領収書)
(3) 海外保険加入料(領収書)

8. 受給者の学会への義務

助成金受給者は、JABのウェブサイトへの原稿執筆(学会出席報告を含む)の義務を負います。この原稿(ワードファイル等)は、原則として、当該のWorld Congress終了後1ヶ月以内に、情報委員会(information@ja-bioethics.jp)に電子メールで提出してください。

9. 選考方針

応募者の選定にあたっては、4.応募資格の条件に加えて、以下の点を考慮に入れます。

(1) IAB第15回 World Congress of Bioethics あるいは2020年度 FAB World Congress Conference における発表形式の分類。口頭発表を優先します。
(2)IABあるいはFABに受理されたProposal(報告)の内容ないしアブストラクト(英語の場合 500 words 以内、日本語の場合1000字以内)。報告内容が優れていることが重視されます。
(3)申請書における「6. 収入支出予算(概算)」の合理性。

10. 審査の主体とプロセス

JAB国際交流委員会が審査し、受給者候補を選定します。この選定について代表理事が最終判断を下し、その確認を受けて国際交流委員会が理事会に受給者についての報告します。

11. 申請書および応募の締め切りについて

  • 所定の申請書(ページ下部からダウンロードできます)を使用してください。
  • 申請書や必要書類は原則として電子化し、国際交流委員会(international@ja-bioethics.jp)に電子メールで送信してください。
  • 申請書の提出締め切りは、2020年2月15日とし、IABあるいはFABにおいてProposalが受理された場合、速やかに国際交流委員会に受理を証明する書類(IABあるいはFABによる受理を通知するメールのコピー等)を、上記JAB事務局に電子メールで提出してください。
  • その後に、国際交流委員会で審議します。国際交流委員会の審議は1ケ月以内に行い、理事会承認を得て、申請者へ速やかに採択についての結果を通知します。
  • なお、IABあるいはFABに提出したProposalが受理されたかどうか等の情報は、2019年12月中旬にIABあるいはFAB事務局から本人に知らせが届くことになっています(上記のURLを参照のこと)。