オンデマンド配信

  • M01. 継続的な患者参画による患者‐研究者の関係性醸成の意義―RUDY JAPANの5年間にわたる実践から
      加藤和人(大阪大学大学院医学系研究科)
      古結敦士(大阪大学大学院医学系研究科)
      磯野萌子(大阪大学大学院医学系研究科)
      相京辰樹(大阪大学大学院医学系研究科)
      山本ベバリー・アン(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • M02. なぜ消費者に事故アルゴリズムの選択肢を与えるべきか―自動運転車におけるトレードオフ事故の倫理
      高口和也(京都大学大学院文学研究科)
  • M03. 医療情報のネットワーク化・共有とビッグデータ分析やAI学習といった利活用に伴う倫理的配 慮の模索過程: 二自治体の事例から
      佐々木香織(札幌医科大学)
  • M04. 医学教育における「非定型的」な知の位置づけ
      森禎徳(群馬大学大学院)

演者報告

医学教育における「非定型的」な知の位置づけ
森禎徳(群馬大学大学院)

 厚生労働省の「令和2年受療行動調査」など各種調査によれば、多くの患者が医師とのコミュニケーションに不満を抱く一方で、多くの医師は自分が患者と良好なコミュニケーションを取っていると認識している。つまり、多くの医師は自分のコミュニケーション能力を過大に評価し、患者の評価との間に大きな懸隔が生じている。

 長期の受診が必要な慢性疾患や生活習慣病が増加しつつある状況を見るかぎり、これからの医師にとってコミュニケーション能力がますます重要となることは明らかであり、このような社会の要請に応えることは大学における医学教育の責務となる。

 この責務を果たすために医学教育に求められるのは、従来の「パターン学習」からの脱却と「非定型的」な知の育成への転換であり、医学教育において傍流と見なされてきた人文系科目の再評価が重要となる。ただし、コミュニケーション能力向上につながる医学教育を実現するためには、人文系科目の単なる量的拡大では不十分であり、討議主体の双方向的授業の導入などによる質的向上が必須となるため、医学教育のあり方そのものを再検討する必要が生じる。とりわけ質量ともに刷新された人文教育を担いうる教員の確保は、喫緊の課題となろう。