2022年11月19日(土) 16:20~17:50
Zoom2 オンライン(ライブ配信)

オーガナイザー

丸山マサ美(九州大学大学院医学研究院)

報告者

鈴木美香(京都大学iPS細胞研究所)・佐藤恵子(京都大学大学院医学研究科)
川勝和哉 (兵庫県立姫路東高等学校)
丸山マサ美 (九州大学大学院医学研究院)

コメンテーター

木村利人(早稲田大学)

キーワード

バイオエシックス教育の転換期、高・大連携

報告

 本ワークショップは、第32回年次大会2020年、新型コロナウィルスが世界的流行時より、中学・高校生を取り巻く教育環境の中にも“生命倫理(Bioethics)”教育の目指す『生命尊重』を深く考究する事の意義を掲げ『中学・高校・大学連携における“生命(科学)倫理”教育・課題解決型学習の取り組み』に関する実践報告を開始した。翌2021年、同テ-マにおけるバイオエシックス教育活動成果やコロナ禍の遠隔教育の利点・欠点と共に、体系的な教育実践のためには必要な事は何かについて討議を継続した。コメンテーターには、世界レベルで今なおバイオエシックス教育・研究を牽引される木村利人先生(早稲田大学)を迎え開催した。木村先生は「今こそ、飛躍する未来に拓かれたバイオエシックス教育の大きな転換期にある」とコメントされた。第34回年次大会2022年、私達は、継続する実践報告と共にリモ-ト参加者との交流を重ねた。

 京都大学大学院の佐藤と京都大学iPS細胞研究所の鈴木は、職業人が責任と自信をもって歩むには自分が「どうあることをよしとするか(生きる基軸)」を立てることが重要と考え、これを考えるための「プロフェッショナリズム涵養プログラム」を大学院などで実践してきた。本発表では、これらの経験を踏まえ、大学生を対象に「生きる基軸」を考える授業実践を紹介した。具体的には、「自分の強みは何か」「職を通じて何を成すか」などの構造化した問いに答えてもらい、生きる基軸を言葉にしてもらった。学生は、価値観を明確にすること、生きる目的を考えることの重要性を報告しており、生きる基軸を言語化する経験は、相克に遭遇したときや人生の岐路(就職、病気など)に立ったときに、本人を支えるものになる可能性があることがわかった。

 兵庫県立姫路東高等学校の川勝は、2005年から高等学校で科学倫理(生命倫理を含む)教育に取り組んでおり、異動のたびに科学倫理教育の土壌を作ってきた。その活動により、多くの高等学校で科学倫理教育の実践が始まっている。現任校では、教員36名が助言者となり、2年次生全員(文系理系)が2単位の科学倫理の課題研究に取り組んでいる。そのほか、生命倫理の研究者を招いたアラカルト講座を設け(6講座)、多くの研究者を招いてGirl’s Expo with Science Ethicsを主催開催して、全国の高校生や教員、近隣の小中学生が、科学倫理の課題研究を発表する取り組みを行うなどによって、科学倫理教育の広がりをみせている。

 九州大学大学院の丸山は、3年間オーガナイザ-を務めると共に、九州大学が2006年から福岡県教育委員会より依頼を受けて始まった“ふくおか高校生知の創造塾”での「バイオエシックス」教育の取り組みと、2022年より『九州大学未来科学者育成プロジェクト(通称:QFC-SP)』メンバ-として、医学研究院での「バイオエシックス研究」に着手した事を報告した。詳細は、講演集をご高覧いただければ幸甚である。

丸山マサ美(九州大学大学院医学研究院)