2022年11月19日(土) 14:40~16:10
Zoom2 オンライン(ライブ配信)

オーガナイザー

中村裕子(日本ヒューマンヘルスケア研究所)

報告者

荒川泰士(高知県ホームヘルパー連絡協議会会長)
北川香奈子(南海福祉看護専門学校)
河島久徳(京都桂病院有料老人ホーム)
中村裕子(日本ヒューマンヘルスケア研究所)

キーワード

介護の倫理、コロナ禍、介護現場、利用者の尊厳、介護職員の立場

報告

【ワークショップの概要】

 今回は、介護の倫理部会で2年間議論し検討を試みた内容から、3つの事例を紹介し、倫理的視点から問題点を指摘し解決を試みた。これら3つの報告を受けて4番目の報告者は、これら3報告の課題解決の過程に認める共通点を示し、生命倫理(介護の倫理)の果たす役割について検討を行い、コロナ禍で生じた問題解決の過程に認める生命倫理の意義ー悪不履行の原則の実践の有用性ーが示された。又、今後の課題として、生命倫理原則を実践するために必要な具体的介護実践の方法(生活支援技術)の開発(工夫)が示された。その後、パネラー間で質疑が交わされ、続いてギャラリーから、介護現場の状況や介護職向け感染症教育の方法などの質問がなされ、有意義な意見交換が行われた。

【各パネラーの報告の概要】

1)報告①(荒川氏):コロナ禍初期に、家族で陽性となった要介護者が訪問看護もショートステイも断られ、訪問介護だけが対応したが、次第に感染への不安や待遇改善を理由にヘルパー不足が加速、要介護者のニーズに応えられなくなった事例を報告。コロナ禍では、要介護者が被る不都合や不自由の軽減・回避を促す「悪不履行の原則」が大切だと指摘した。

2)報告②(北川氏):コロナ禍の病院や介護施設に暮らす要介護者が、感染防止の理由で
家族との面会が禁止され、趣味の針仕事も針が危険という理由から禁止され、生き甲斐を失い車いす生活となった事例を報告。感染症への対応のために生ずる”要介護者のストレスや不満”の軽減・回避を促す「悪不履行の原則」の実施の必要性を訴えた。

3)報告③(河島氏):コロナ禍初期の介護施設で、通常の介護実践ができないストレス
から職員間の信頼関係が損なわれ、要介護者との関係もギクシャクしたため、リスクコミュニケーションの実践を試みた結果、改善をみた。コロナ禍では、要介護者に対して「悪不履行の原則」の適用で、ストレスや不満を軽減・回避することが大切だと実感した。

4)報告④(中村):上記三事例では、「自律尊重の原則」は守られないものの「悪不履行の原則」の実践によりQOLや人間関係に改善がみられ、介護の質が大きく改善したことが認められることから、コロナ禍における介護現場の課題解決に「生命倫理(学)」が有用な役割を担うことが示唆された。

中村裕子(日本ヒューマンヘルスケア研究所)