大会長 土井 健司(関西学院大学)

 新型コロナウィルス感染症による災禍が生じて、もう二年半になります。コロナ禍のため20 年度の静岡大学、21 年度の慶應義塾大学、いずれの年次大会もオンライン実施を余儀なくされました。私どもが年次大会の実行をお引き受けしたときには、大会実施はコロナ終息後となり、学会員同士の対面での交流が実現できるよう祈念しました。その願いは部分的にしか叶いませんでしたが、何とか一つの会場だけはハイブリッドとして対面実施の場を確保し、皆様にお越しいただけるようにいたしました。また二会場では Zoom を使ったシンポジウムをプログラムし、また一般演題はオンデマンドで一定期間視聴していただけるように準備しております。これらについては来学の上でのオンライン参加の場所も用意しております。

 生命倫理の問題にこれまで私なりに取り組んで参りましたが、人との交わりがその根本にあると考えております。歴史を振り返るなら人体実験、中絶、脳死・臓器移植、安楽死などは古典的ともいうべき問題群ですが、それぞれ問題の根にはひと・人というものの忘却があると考えています。被験者となる人、臓器摘出されるドナーとなる人、安楽死を願わなければならなくなった人、複雑化する社会、高度に発展する医療の場におけるひと・人の忘却が生命倫理の根本にあって、こうした忘却をどのように克服、あるいは緩和しバランスをとるのかが考えられ、生命倫理の歴史が刻まれてきたのではないでしょうか。本大会のテーマとして「ひとに聴き、ひとを見つめる生命倫理」を掲げたのは、このような考えに基づきます。またこの忘却を克服すべく、どれだけ優秀な手段、方法、マニュアル、ガイドラインを作成したとしても、常に現場において具体的なひとに向かい、その言葉に耳を傾け、また注意深く見る必要がある。日ごろからこのように考えていなければ、また忘却が生じてしまうように思います。

 大会実施にあたり本学の藤井美和副大会長とは大会テーマや企画シンポジウムについてよく相談させていただき、また実務面では加納和寛事務局長がしっかり支えてくださっています。また学会事務局、情報化委員長、実行委員の先生方も惜しみない協力をくださってミーティングを重ねることができ、ここにいたっています。心からの感謝しかありません。

 大会当日には、皆さまが大勢、参加してくださり、年に一度の交流の場をかけがえのないものとしてくださることを願っています。コロナ禍も終息しきらず、関西学院大学(上ケ原キャンパス)は主要駅からは離れておりますが、できるだけ足を運んでいただければと願います。もちろんオンラインのみの登録もできます。皆様の参加をお待ちしております。