趣旨

 このワークショップは、「ロックトイン・シンドローム(LIS、閉じ込め症候群)」の人びとの生きられた経験を明らかにするための国際プロジェクトの一部です。

 多くの人にとって、LISというのは馴染みのない病名(症候群名)でしょう。これは、脳の障害や病気(たとえば、筋萎縮性側索硬化症(ALS))が原因となって、身体が動かず、言葉も出なくなった状態を指しています。ただし、全身が麻痺していても、五感と認識力は冒されておらず、目の動きとまばたきで意志を伝えることはできます。

 企画者の一人であり、LISとなった母を見送った経験のある川口有美子は、かつて「ALSの人の話は短く、ときに投げやりなようでもあるけれども、実は意味の生成まで相手に委ねることで最上級の理解を要求しているのだ」と述べたことがあります(『逝かない身体』)。たしかに、ここで紹介する一つ一つの語りは長くはありません。もちろん、その理由が障害にあります。

 けれども、コミュニケーションすることの「困難」は「不可能」を意味しません。聴き手が諦めない限り、短い語りも豊かで深い相互作用を生み出すことができます。それが、この国際共同研究の出発点でした。ここでは、そうした人びとが、自らの身体の状態と自らの棲まう世界をどのように経験しているかを、アンケートやインタビューで明らかにする国際共同研究の成果の一部を紹介します。

 そして、このワークショップそのものは、研究に留まらない一つの実践として、LISの人びと自身が時間をかけて一文字一文字を入力した語りを紹介し、ゆったりとしたコミュニケーションの場を生み出すことを目指しています。

 さらに、日本での調査では、コロナ禍についての問いも追加しました。そこからは、ウィズコロナ社会を生きるLISの人びとだけの経験に留まらず、「脆弱性」を有するとされてきた人びと~病者・障害者・高齢者など~の姿も見えてくるでしょう。

 コロナ禍は、外出の難しい状況の中で工夫しながら日々を過ごし、人工呼吸器の必要性を心配する生き方を、多くの人びとにとってリアルなものとしました。しかし、ここで強調したいのは、それが、ある人びとにとっては緊急事態や非常事態ですが、別の人びとにとっては生活の常態に過ぎないということです。ウィズコロナ社会での「生きるのに忙しい」生き方を指し示す先達に耳を傾けることから、始めることにしましょう。

イベント名称

ロックトインを常態として生きる withコロナ社会研究プログラムの成果から

日時・申込み

3月28日(日)15:30開場 16:00開始 19:00終了予定

お申し込みはこちらから:

https://tinyurl.com/y74fv28h

参加費:無料 

*情報保障が必要な方のために文字通訳が入ります

プログラム

第1部

16:00~16:15 開会挨拶、趣旨説明(立命館大学生命科学部 姫野友紀子)

16:15~16:35 「ロックトイン・シンドローム入門」(立命館大学先端総合学術研究科 美馬達哉)

16:35~17:05 「ロックトインで経験する身体と時間」(「withコロナ社会での持続可能なケア」調査中間報告1)

17:05~17:25 「スペインとフランスでロックトイン・シンドロームと共に生きる人々の一人称の語り:人びとは何を語るのか、“First-person narratives of people living with LIS in Spain and France: What do they talk about?”」(Rovira i Virgili University Lina Masana)(通訳あり)

17:25~17:35 休憩(10分)

第2部

17:35~17:55 「ロックダウンのなかのロックトインの経験」(「withコロナ社会での持続可能なケア」調査中間報告2)

17:55~18:55 全体討論

ファシリテーター 川口 有美子|NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会副理事長/事務局長

調査被験者の人びとからの追加意見と調査へのフィードバック

指定発言 伊藤 道哉|日本ALS協会副会長、中西 正司|全国自立生活センター協議会副代表、村上靖彦|大阪大学人間科学研究科

コメントと総括 Fernando Vidal|ICREA/Rovira i Virgili University

18:55~19:00 閉会挨拶 立命館大学先端総合学術研究科 美馬達哉

イベントURL

https://www.ritsumei-arsvi.org/news/news-3542/

主催・共催・後援

主催:立命館大学「withコロナ社会での持続可能なケア」研究グループ

共催:立命館大学生存学研究所、NPO法人ALS/ MNDサポートセンターさくら会

後援:立命館大学先端総合学術研究科

本ワークショップは挑戦的研究(萌芽)「マイノリティアーカイブの構築・研究・発信:領域横断的ネットワークの基盤創成」(19K21620、代表:美馬達哉)の支援を受けています。

本イベントのお問い合わせ

lismimahimeno[at]gmail.com

情報提供

美馬 達哉(立命館大学

イベントポスター等

 

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ポスター:210328-arsivi-event-poster