香港で開催された第2回ヒトゲノム編集国際サミットにおいて、中国の研究者がゲノム編集を行った受精卵から双子を出産させたという発表が行われた(2018年11月28日)。発表内容の真偽について現時点では明らかではないが、当学会としては非常に憂慮すべき事態と考える。

近年、世界中で行われている議論や報告書などで表明されているように、人を対象とする世代を越えたゲノム編集の臨床応用については、安全性および倫理面・社会面からの懸念など、さまざまな観点を総合し、現時点では禁止すべきとされている。今回のケースは、そのような考えに反し行われたもので、サミットで公表された内容から判断する限り、医学的目的の不明確さ、倫理審査の過程や研究計画の透明性の欠如、被験者保護の方策の不十分さなど、様々な点で倫理的に問題があるものと考えられる。

このような非倫理的な行為は断じて許されるものではなく、当学会としての懸念を表明するものである。

日本生命倫理学会は、これまでもゲノム編集技術について議論の場を設けてきた。今後は、今回のような非倫理的な行為の再発を防止し、ゲノム編集技術という新しい技術が適切に利用されるために、市民、患者、および関連分野の科学者や専門家とともに、社会の中で広く議論が行われるように、そして、適切な規制の整備が行われるように、さまざまな活動を進めていく所存である。

2018年12月9日
日本生命倫理学会
理事一同