• 日時:2019年12月7日(土)13:50~14:55
  • 会場:東北大学川内キャンパス 文科系総合講義棟・第2小講義室(D会場)
  • 座長:浅井篤(東北大学)
  • 13:50~14:10
    放射線被ばくの生命倫理学的考察
    亀井修(大阪物療大学/京都府立医科大学)
    瀬戸山晃一(京都府立医科大学)
  • 14:10~14:30
    遷延性意識障害患者に対する資源配分抑制論への批判
    徳永純(狭山神経内科病院)
  • 14:30~14:50
    ドイツの医療情報法
    村山淳子(西南学院大学)
  • 14:50〜14:55  時間調整

座長報告

一般演題Ⅳでは「医療政策に関する倫理」と「医療化をめぐる諸問題」をテーマに5つの発表があった。

亀井修・瀬戸山晃一両氏の「放射線被ばくの生命倫理学的考察」の発表では、低線量被ばくの影響が科学的に証明されておらず、被ばくのリスク評価については見解が分かれていることを出発点に、現在の生命倫理学領域では被ばくと倫理についての検討がほとんどないこと、医療被ばくについてはほとんど問題視されてこなかったことが指摘された。そして生命倫理の諸原則に照らして、臨床医療における放射線被ばくの倫理的許容性の議論を進めることが重要であると主張された。

徳永純氏の「遷延性意識障害患者に対する医療資源配分抑制論への批判」の発表では、医療費の増大と財政難を背景に、遷延性意識障害患者に対する医療資源配分を抑制すべきだという見解が繰り返されることを背景に、質調節生存年を含む経済的効用を問題にしつつも、配分的正義の観点から当該患者への医療資源配分を抑制する方針を批判した。最新の医学的所見を引用し同状態の患者の主観的QOLが低いとは言えないケースがあるとして、トリアージによる医療費削減ではなく、マクロアロケーション問題として取り組むべきだと主張された。

村山淳子氏の「ドイツの医療情報法」の発表では、我が国と類似する医療法制と有しながら医師の守秘義務や患者の人格権を貫く伝統があり、我が国に30年先行してデータ保護を確立したドイツの法状況を、医療情報の保護と利用という観点から分析した。そしてドイツの医療情報に関する法体制は3つの異なる法体系の関係性の変遷から生じたこと、同国においては患者の死後においても医師の守秘義務が存続すること、そして患者の利益と対抗関係に立つ遺族や相続人の利益を調節する理論とバランスが論じられた。